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2007/04/20
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カテゴリ:醸造所訪問
ライヴェン村のザンクト・ラウレンティウス醸造所は、ピースポートにも葡萄畑を持っていた。川向こうの猫の額ほどの小さな一角で、ボートでしか渡ることの出来ない場所にある。2005年から耕作を引き受けたそうだが、トラクターも到達出来ないので、農作業の度にいちいちボートで行き来する。収穫もボートで対岸まで運ぶのだそうだが、もしも転覆したら一年の成果が文字通り水の泡である。酔狂な葡萄畑だが、それだからこそ世話をする価値もあるのだろう。

ボートで渡る葡萄畑
ボートでしか到達出来ない葡萄畑。右下に船着き場が見える。

畑を眺めていると、次に訪問するヨハン・ハールト醸造所のご主人、ゲアト・ハールトのヴァンが到着、僕たちはそちらに乗り換え、ラウレンティウス醸造所の二人に別れを告げた。橋を渡り、一気にピースポート村とゴルトトロプヒェンの畑を見渡す高みへと昇る。ヨハン・ハールト醸造所の所有する6haのうち、約2haがゴルトトロプヒェン、その他はドームヘア、ファルケンベルク、グラーフェンベルク及びトレプヒェン。いずれもピースポート村である。

ゲアト・ハールト
醸造所オーナーのゲアト・ハールトとピースポートから下流への眺め。対岸はピースポート村の歴史の浅い方。

「ファルケンベルクは、ゴルトトロプヒェンの斜面の上半分。ドームヘアは村はずれの川沿いの斜面で、グラーフェンベルクはその先、南東向きになったあたり。トレプヒェンは対岸にある平地の畑で、デイリーワイン向き。
ピースポート村はローマ時代の葡萄圧搾機の遺跡もある、2000年近い歴史を持つ集落なんだ。それは葡萄畑の麓の川沿いにある細長い集落で、これが本来のピースポート村。対岸もピースポート村だけど、歴史は浅い」とゲアト。彼の醸造所は元祖ピースポート村にあり、その背後、村の中央真上あたりに区画がある。昨年、サッカーのワールドカップが開催された際、そこに大きな日の丸が出現して話題になった。
「粉砕した木片を畑に敷いたんだよ。日の丸の赤い部分は塗料で染めて」と笑う。一体どこからそんなアイデアが出てきたのかと思うのだが、それだけ日本は彼にとって重要なお客様なのだ。96%がリースリング、約7割が甘口に仕立てられ、6割前後がドイツのワイン商を通じて主に日本と北米に輸出されている。ドイツ国内は個人顧客に販売されており、いわば隠れた銘醸造所という趣がある。

ピースポート村
ピースポート村と葡萄畑。写真右上、一番上の道路脇の区画に木片を敷いた痕跡が残っている。上流方向への眺めで、奥に向かってドームヘア、グラーフェンベルクへと続く。

午後の陽光に照らされた葡萄畑を斜めに横切るようにして村へと下る。川沿いの細長くこぢんまりとした村には、醸造所がひしめいている。その中でもラインホールト・ハールト醸造所がもっとも成功しているが、ヨハン・ハールト醸造所、ロイシャー・ハールト醸造所、クルト・ハイン醸造所も捨てがたい。ラインホールトとロイシャーの両ハールト醸造所とは親戚同士だ。ハールト家は1337年にピースポートの葡萄畑の所有者として史料にその名が現れる。やがて相続により1920年代にヨハン・ハールト醸造所が成立した。2007年版ゴー・ミヨではラインホールト・ハールト醸造所のテオ・ハールトが今年の醸造家の栄誉を獲得したが、妬みやっかみなどはなく、親戚同士で農機具を共同利用するほど仲はいいそうだ。

村はずれに近いヨハン・ハールト醸造所の壁には藤の枝が這い、その季節には見事な紫の花で彩られる。かつてケッセルシュタット家の所有であったという醸造所の建物の一階に酒蔵はある。奥にすすむと斜面の下を堀抜いた空間になっており、発酵に用いるステンレスタンクが並んでいる。壁の片隅からは地下水が染み出し床を濡らし、空気をしっとりと冷やしていた。別の部屋には伝統的なフーダー樽が、まるで押し込まれているようにして並んでいる。近年では大半をステンレスタンクで発酵し、フーダー樽発酵はシュペートレーゼ以上の一部に留まる。

ヨハン・ハールト醸造所ケラー
醸造所のケラー。

2006年産を中心に9種類を試飲した。
2006年は容易な年ではなかった。ボトリティスの他にも、果梗がしおれる症状が目立った。ボトリティスはそれほど深刻ではなかったが、果梗のしおれた房は使い物にならないので除去した。例年10月25日頃から11月まで続くリースリングの収穫作業は、2006年は10月2日から始め20日には完了。果汁糖度は2005年並の高さになったが、収穫量は例年の80hl/ha前後に対して50hl/haに留まり、生産量も約15%減った。
しかし、その出来栄えは素晴らしいものがある。おしなべてクリーンで生き生きとしており、素直な柑橘のフルーツ感がミネラルと調和している。果実味は適度に濃厚で曇りが無く、モーゼルらしい繊細さを備える。2005年産は落ち着きと深みが現れ、飲み頃に入りつつあるようだ。2006年のゴルトトロプヒェンのアウスレーゼはクリーミーで濃厚な蜂蜜にレーズンのヒント、アフタにミネラルが明瞭に感じられる。同年ゴルトトロプヒェンのベーレンアウスレーゼは気品に満ちた力強い蜂蜜。見事な出来栄えであった。

ヨハン・ハールトエチケット

1985年からは醸造所を引き継いだゲアトは、1971年には醸造所で仕事をしていたというから、ワイン造り36年のベテランだ。娘さんが二人いるが、長女は銀行家に、次女は薬剤師に嫁いだ。息子はいない。だが、料理人をしていた甥っ子が醸造家を目指し、ヘイマン・レーヴェンシュタイン醸造所やエムリッチ・シェーンレバー醸造所で研修したという。600年を超える醸造所の伝統は、どうやら将来へも引き継がれそうだ。

ちなみに、醸造所は民宿も経営している。一泊一部屋42ユーロ(2人)。ピースポート村とそのワインを満喫出来ることは間違いないだろう。詳細は醸造所HPにて。

Weingut Joh. haart
Sankt-Michael-Str. 47
54498 Piesport
www.johann-haart.de





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Last updated  2007/04/21 07:43:52 AM
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李斯。@ お久しぶりです。 御無沙汰しております。 何時も拝見してい…
pfaelzerwein@ Re:ひさびさのドイツ・その64(04/05) 「ムスカテラー辛口」は私も買おうかと思…
mosel2002@ Re[1]:ひさびさのドイツ・その54(03/14) pfaelzerweinさん >私の印象では2013年…
pfaelzerwein@ Re:ひさびさのドイツ・その54(03/14) 私の印象では2013年からは上の設備を上手…

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