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カテゴリ:本
村上春樹さんの話題の作品 ’ 1Q84 ’ をようやく読み終えた。
「青豆」というめずらしい名字の女性と、「天吾」という名の男性の、何の接点もない二人の人生をどこまでも並行に描いている小説・・・ 読み始めは次のページをめくる面白さも感じらず期待はずれの小説のように思えた。 人間的モラルが欠如した性欲の強い女たちと、特に何も考えず人生を受動的に生きているゴーストライターの話・・ 秋の夜長、ため息をつきながら、なんとなく読み進めていくうちに、接点の無いはずのふたつのストーリーがゆっくりとクロスし始め重大な事柄を暗示してきた・・・。
カルト宗教、狂人が創る架空の精神世界。 親のエゴで人権を奪われる子供たち・・ 永遠に解放されない心の暗闇に閉じ込められる。 感情を亡くした少女はもうひとりの自分を紡ぎ出した。
学校の教室で10歳の青豆は、天吾の瞳に「同類の孤独」を見出だし、無言のまま強く手を握り締めた。 そしてそれが二人が共有した最後の大事な時間になった。 10歳のまま大人になった主人公たちは、過去を離れた今も心を閉ざし、都会で現実逃避を繰り返す。
法律で裁けない「悪者」を、代わりにこの世から抹殺しようとする正義感も、ある意味独善で自らも犯罪者(悪者)となる。
主人公たちがお互いを探し求め、夜空に浮かぶもうひとつの青い月を共有する時点から本当の意味の現実がしっかりとした色や形を現わし始めた・・・
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