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カテゴリ:虫
続いて、単眼の話です。
図1(再掲) : アブラゼミの単眼 バッタやハチの頭には単眼が3つあります。 単眼を2個しか持っていない昆虫や、カブトムシのように単眼を持たない昆虫もいますが、 基本的に単眼は3つです。 なぜ、単眼は3つ必要なのでしょうか? ---------- 簡単に言うと、ボールを支えるときは指2本より指3本で支えるほうが安定するように、 空間もボールと同じく3方向を測定することで認識できるからです。 単眼の見た目はまるで人間の目に似ていますが、 レンズの下に網膜があるという、実は同じ構造をしています。 しかし、単眼のレンズは光感受部位を越えたはるか後ろで焦点を結ぶため、 像を認識することはできません。 では、単眼の役割は一体何でしょうか? ---------- …というクイズにしようかと思いましたが止めました。 単眼の研究は古来から続けられていましたが、単眼の『像を結びえない』という 一見して意味のない性質が、研究者たちを悩まし続けました。 解答を得られたのは最近で、1970年代のことです。 それは、『単眼は空と地面の明暗比(コントラスト)を検知する』 というものでした。 つまり、単眼は 空間を認識する能力を捨てる代わりに、明暗変化の認識力を高めた のです。 単眼は複眼に比べて信号伝達系が非常に速いため、時間分解能は複眼以上です。 昆虫はいかに時間スピードを重視しているかが分かると思います。 ---------- では、明暗認識が何に役に立っているのかかるく説明します。 人間は内耳で、昆虫は単眼で平衡感覚を感じ取ります。 図2 : 快適な空の旅 昆虫は飛翔やジャンプをする際、図2のような3方向の軸の傾きを感じとり、 身体を平衡に保ちます。 例えば、ご機嫌よく飛翔している昆虫の単眼に、 空からの光と、地面からの暗い光が半分ずつ入っているとします。【図3の(1)】 横から吹いてきた風により身体が傾くと、単眼に入る光の入り方が変化します。 この変化はとても微小であり、人間にはとても認識できるレベルではありません。【図3の(2)】 そして前に身体が傾いた際は、空から入る光の量が減ります。【図3の(3)】 図3 : 単眼に入る光量の変化 このように、微小な体の傾きを単眼に入る光の変化で感じ取ることにより、 飛翔バランスの制御をしているのです。 厳密にはもう少し複雑なシステムなのですが、 内容はあまり面白くないのでこれ以上説明はカットします。 ---------- 今回で、複眼と単眼の話は一旦おしまいです。 これ以上書くと内容が一気に膨大になり収拾が付かなくなるので、 また複眼・単眼が懐かしくなってきたら、書こうかと思います。 (『単眼・複眼・千里眼』 おしまい) ---------- お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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