カテゴリ:高速路線バス
西口でのアルバイト時代にもう一つ印象的だったのは、利用者(乗客)の流れである。
観光シーズンなど特別な日を除くと、午前に新宿を出る便には空席が目立つ一方、長野や山梨各地からのバスは満席で到着する。逆に夕方になると長野や山梨に帰る人たちで西口は忙しくなる一方、新宿に戻ってくるバスはガラガラであることが多い。つまり、中央高速バスの利用者は、東京側よりも現地(長野、山梨)側に住んでいる人の方が割合が大きい。 この構図は、おおむね他の方面の路線でも同じである。理由はいくつかあげることができるが、最大の要因は、路線バス事業者の地域での存在感の差であろう。 例えば中央高速バス松本線は京王と松本電鉄の共同運行だが、松本市における松電といえば地元の名士企業である(最近、ちょっと揺らぎつつあるが、それがかえって松電の存在感の大きさを浮き彫りにした)。その松電のフラッグシップ商品である新宿行きの中央高速バスは、松本市民に十分に認知されている。松電が高速バスの告知(広告等)を松本で行なえば、名古屋行きも大阪行きも県内路線も一気に告知できるという効率のよさもある。 一方の京王は、事業規模では松電をはるかに凌駕するが、首都圏マーケットにおける相対的な存在感では松本での松電に遠く及ばない。京王線の鉄道駅にポスターを貼っても他の沿線住民にはリーチしない。松本は京王、新潟は西武、秋田なら小田急が高速バスが運行していると知っている首都圏住民が、一体どれほどいるのか? 沿線需要の喚起という路線バス事業者の「伝統的マーケティング」の結果、高速バスの認知度は「地方>大都市」なのである。 では、大都市の路線バス事業者は、その差を埋めるための積極的なマーケティング施策を実施してきたか? いま私は、色々な場で、国交省のデータを元に、パワーポイントでカラフルなグラフを投影して、高速バスの認知度は「地方>大都市」であることを説明する機会が多い。それに続けて、ウェブマーケティングを積極的に活用したのが新興勢力の高速ツアーバスであるから、これまで取り込めていなかった大都市住民の需要を喚起し高速ツアーバスが急成長したのだとお話しする。マスコミがその考えを紹介して下さるケースも増えてきた。もちろんその次には必ず「だからこそ高速路線バス事業者も、ウェブマーケティングを効果的に活用できればもっともっと成長できるはず」と付け加えるし、それが私の高速バス予約事業における信念でもある。 国交省のデータ。パワーポイントのカラフルなグラフ。テレビのインタビューや大きな会場でのパネルディスカッション……「仕事っぽく」「立派っぽく」見ていただけるようになったが、その原点は、西口で走り回ってバスを誘導していた、アルバイト時代の経験、実感値なのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.02.24 09:44:18
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