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成定 竜一~高速バス新時代~

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2014.05.26
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カテゴリ:バス産業
去る16日は、業務提携先である「サポートエクスプレス」社が、セミナー「高速バス・貸切バスはどう変わるのか」を開催。全国から、バス事業者を中心に車両メーカー、リース会社など約140人にお越しいただき、私は運営全般のお手伝いのほか、講演を1本担当した。

同社の代表を務める飯島氏は、大手私鉄系事業者の本社および営業所でキャリアを積み、行政書士の資格を取り一昨年に独立、さらに同社を起業したという、業界では珍しい経歴の持ち主(運輸局などを退職し行政書士事務所を開設する例は聞くけれど)。年齢が近く話も合うことから、業務提携先というより友人といった方が正しいかも。ちょうど独立した時期が高速ツアーバスの乗合移行と重なったこともあり、比較的大手を含む、かなりの数の事業者の移行を支援され、彼がいなかったら一本化は完了していなかったと心から信じている。

さてセミナーでは、私はここ2年間の報道対応を振り返り、報道という「アウトプット」から遡って、バス事業者に求められる安全性について皆様に考えていただいた。そして名古屋大学の加藤先生が、貸切バスの新運賃・料金制度についてご説明。予想通り加藤先生への質問が止まず、運営側としては時計を見ながらヒヤヒヤ。正直なところ、バス関係の会で、あれだけ熱い質疑応答は初めて見た。私の講演などではみんな黙ってしまうのに…

※加藤先生のプレゼン資料については、参加していない方も、まもなく本ブログからダウンロードできるように準備中

貸切バスの運賃問題は、(旧)バス事業のあり方検討会から重要なテーマであった。ただその割には、事務局が「本日のテーマは貸切バス」と言い切っていても、いつの間にか話は高速ツアーバスの問題に流れ、十分な議論がなされないまま(旧)が終了し、関越道事故が発生した。社会の注目を大きく浴びる中で昨年度中に新制度決定まで導くことは、「貸切バス運賃・料金WG」で座長であった加藤先生にとって大変なご苦労があったと思う。

さまざまな背景があって貸切バス業界内、旅行業界内で周知も遅れ気味であったので、今年3月の発表を聞いて驚いたというのが各事業者の本音ではあろう(もっとも、会議の進捗は常に発表されていたから、自社の生き様にかかわることだけに常にウォッチしておいてほしかったとは思うが)。「形の上では」実は大きな変化ではないが、実態としては大きく事業環境が変化するので、受け止める方にすれば身構えてしまう気分はよくわかる。しかし、明らかにポジティブな変化なので、その変化をうまく活用してほしい。

現実には、B to B取引の価格を制度で縛ろうというのだから、現場から見た場合に<このケースはどうなるのか?>、<抜け駆けして安売りで仕事を奪っていくヤカラがいるのではないか?>など疑問や不信は消えないだろうが、そんな疑問や事業者間の相互不信に引きずられるのはナンセンスだ。今回の制度は、(形の上ではともかく実態として)貸切バスの実勢価格を上げる大きな、かつ最後のチャンスなのだから、レギュレーション(制度)というよりも、営業上のオポチュニティ(絶好の機会)として理解した方が健全だろう。

また、貸切バスの運賃について制度的な縛りを強くすべきかどうかについては議論もある。私の前々職であるホテル業界では、国際観光ホテル整備法に基づき宿泊料金を行政(奇しくも運輸局。私も「馬車道」に届出書を持参したことがある)に届け出ているが、その料金でホテルを予約する人はまずいない。その程度でいいような気もしないでもないが、現実を見ると、ホテルの場合は値崩れが激しいといいながらもまだ「大人の競争」が展開されているのに対し、今日の貸切バス運賃の決定メカニズムは末期的であり、やむを得ないところか。

バス業界は、つまり、制度に縛ってもらわないと自分たちが生きていけなくなったことを恥ずかしいと感じたうえで、それでも新制度をチャンスと捉えるべきである。一部の規制強化論者の方々は、規制を強化すればさえ「よかった頃」が戻ってくるという認識をお持ちのようだが、旅行形態が団体から個人へシフトした今、残念ながら貸切バス事業はそんなにいい思いはできるはずがないことを、まずは理解する必要がある。一方で、長期的な収益性をいっさい無視し目先の仕事のために値崩れを引っ張っている一部の事業者も、業界ひいては自社の首を自ら絞めているということを認識すべきだ。

ビジネスというものは、規制に守ってもらえばさえ長生きできるほど甘くないし、目の前にあるものだけを見て刀を振り回すようなやり方で勝ち残れるほど簡単なものではない。

新制度を前にいま最も求められているのは、自社の貸切バス事業を永続、成長させたいという「経営の意志」である。日車単価の上昇額×自社車両数×稼働率×365日と計算すると、バス事業者は年間何百万、何千万の収益(粗利)のアップになるはずだ。そこで得た新たな収益を何に投資するか。そして、その投資(例えばハードソフト両面における安全性向上の取組であり、例えば営業力の強化であり、例えば利用者の満足度向上であり、例えば乗務員の待遇改善である)から、翌年はさらなる収益増を得て、それをまた新しい投資に回していく…そのサイクルを回しながら一歩ずつ、会社としてのリスクを低減し、体力をつけ、一つ上のステージへ上がっていく。そのシナリオを書いていくのが経営というものだ。その上り坂への最初の一歩を、制度が助けてくれるとは貸切バス業界は幸運だ。

道路運送法改正から間もなく15年。その間、毎日の生き残りに必死で先のことなど見えていなかった「新免」側も、逆に攻め込まれるばかりで守り方を見つけられなかった既存側も、いま初めて、本当の意味での「経営」の力が問われているのである。


※サポートエクスプレス社は、主に貸切専業者様を中心に、「安全性向上のために何をどう取り組めばいいかわからない」「セーフティバスを取得したい」などのご相談をお受けしていますので、ご興味のある方は直接または成定までご連絡ください。





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Last updated  2014.05.26 08:36:29
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
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