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成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

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2015.04.17
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カテゴリ:メディア掲載情報
ずいぶんと長い間、本ブログ本来の目的を放棄して、【ご案内】や【ご報告】と頭に付けてイベント開催やメディア露出の情報提供だけにとどまっていたが、そろそろ少しずつ、バス業界への提言という本来の使い方に戻していこうかと。

さっそく本文に入る。このブログで何度も書いてきたし、「高速バス・マネジメント・フォーラム」でも申し上げたことだが、「既存」高速乗合バスは、地方部における既存事業者の存在感により、過去30年かけ、地方部にお住いの方の大都市あるいは地方中核都市への足として高速バス市場を作り上げた。ここ10年では、旧・高速ツアーバス各社がウェブマーケティングを上手に活用し、両端が大都市の路線、具体的には首都圏~仙台、名古屋、京阪神線において潜在需要を大きく呼び起こした。地方→大都市、大都市←→大都市と来たなら、残された市場が大都市(およびその背後にある海外)→地方であることははっきりしている。

片や、すぐお隣の業界である旅行業界や、それを中心とした観光産業は大きな変革期に差し掛かっている。この国の旅行業界は、団体を組んで貸切バスを借りて、有名観光地を総花的に回って大型温泉旅館へ、という「マス・ツーリズム」が主流であった。そうすることで旅行代金を下げることができ、この国がまだ貧しかった時代においては、一般庶民に対しても旅行に行く楽しみを提供できたという点で大きな意義があった。だがこれだけ情報が巷にあふれ、かつ時間の過ごし方が多様化している時代に、「旅行に行く」「有名観光地をこの目で見る」ということそれ自体は、もう時間とお金の使い方としてはあまり魅力的ではない。

一方、消費者を取り巻く情報量が増えているからこそ、人々の関心は「分化」し「深化」が進む。「そこに行かないと経験できない」事象も増えてくる。「家族で農家に泊めてもらい一緒に田植えを経験する」とか「郷土史の専門家のウンチクを聞きながら寺社を回る」とか「好きなアニメの舞台を見に行く」などである。旅行はこれからますます個人化が進むであろう。

加えて、訪日外国人(インバウンド)が急増している。2003年には年間500万人であった訪日外国人を2010年に2000万人に増やすというのが政府の方針である。ただ、これを単純に「4倍」と見るのは間違いだ。そもそも上記数字には業務渡航(出張)客などが含まれるが、伸びしろの多くは観光客であろう。また、現在、台湾や中国を中心にアジアからの観光客は団体ツアー参加者が多いが、これがFIT(海外からの個人観光客)にバラケていくだろう。つまり、FITの増加分だけ見れば、4倍どころの話ではない。

FIT化の理由は二つある。一つは、この国はアジアの人々に対して個人観光ビザ(査証)の発給を厳しく制限していた。日本人が個人で観光に行けないのは北朝鮮くらいだが、アジアの人たちは気軽に日本に遊びに来ることができなかったのである。ただ政府はビザの発給条件を大幅に緩和しつつある。二つ目は、人は、旅慣れないうちは団体ツアーを好むが、やがて個人で旅をする比率が上がる。日本人も当初は、旅行会社のロゴが入ったお揃いのバッグを持ち(保育所のお散歩かよ!)団体で「パリ・ロンドン・ローマ10日間の旅」を楽しんだのだ。「ノーキョー(農協)ツアー」が代名詞になった時代。それもしかし、時代が進むと『地球の歩き方』が大ヒット。海外旅行は個人旅行へシフトしていった。

仮に、2000万人うちのわずか1割が、一度の訪日中に1往復(2便)、高速バスを利用してくれたら、輸送人員としては年間400万人。高速ツアーバスからの「移行組」合計が約600万人であるから、インバウンドが無視できない市場であることはご理解いただけるであろう。FIT化により、インバウンドは「ごく一部」の貸切バス事業者のものではなくなるのだ。

ただ、邦人客もFITも、黙っていれば高速バスを観光で使ってくれるわけではない。

私は、決して簡単なことだとは考えていない。単にダイナミックパッケージの仕組みを開発したとか、ウェブ予約を多言語化したとか、それだけで答えが出せるものではない。今の高速バスを商品として見た場合、地元の用務客(特にリピータ)に焦点を当て過ぎており、観光客が使いやすいものだとは到底言えない。また(邦人、外人ともに)一般的な旅行者が旅行を計画する際に、高速バスがその候補に上がるような流通網を築けているわけではない。

だからこそ大きなデザインを書いていきたい。商品サイド、流通サイド両面において、これまでの「移動」に特化した高速バスと、「旅行」としての(しかしながら上記の通り「お仕着せ」として敬遠されかねない)バスツアーとの間にある大きな隙間を埋めていくことを考えていきたい。それはおそらく、5年も10年のかかる市場のデザインということになろう。

一方、「いまできること」を地道に進めることも重要である。昨年末、古巣である楽天トラベルの担当者にそれを伝えたらその場で盛り上がり、まずは、乗務員の外国語対応を支援するため、乗務員携行(実質的には運転席常備)用の「外国語対訳集」を作る話になった。高速バスの現場でよく使う会話を私がリストアップし、5ヶ国語(英/繁体/簡体/ハングル/タイ)に翻訳した。冬場には、スキーリゾートを抱え外国人乗客の比率が大きい数社にテスト運用を行なっていただいた。そこで上がった意見も反映したものを、3月末、無料で全国70社に納品が終わったところである。コストは全て楽天トラベルが負担してくれた(※)。

DSC_0515.jpg

大きなデザインと地道な一歩。そして、観光立国というこの国の次なる生き様の一翼を担えるという誇り。それらのバランスが、新しい市場を切り開いてくれると信じている。

※対訳種の件にについては、『トラベルボイス』が15日付でまず報じてくれた。いくつかの媒体で記事掲載が続く見込みだ。合わせて、導入各バス事業者においてもプレス発表をお勧めしお手伝いしたところ『日本経済新聞』地方経済面において、海部観光と関越交通のケースをご紹介いただいた。
※4月17日追記:同日付『日刊自動車新聞』にも記事掲載いただいた。





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Last updated  2015.04.17 17:28:52
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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