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長押 綴

長押 綴

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2010.03.03
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カテゴリ:◎2次裏漫
「やっと独り占めできたって思った」

「あたし、酷いよね」

「ごめんなさい」

「……いいよ、別に」


同盟伝いであたしの所にお鉢が回ってくるとは思わなかった。

珍しく、彼女が同盟に顔を出した時点でイレギュラーだと思ってはいたけど、こうなるなんてなあ。

……あいつが死んで、一年が経った。
その一年間あたし達はあいつの思い出話に依存していた。

腐っても子供の頃からの親友だから、あたしは思い出話をする事で、少しでも未来での皆の記憶を上塗り出来たらなんて思ってた。






「彼はいつも、いつまでも、あの人のことばかり考えてるの」


思い起こすほど、彼はあいつの為にばかり動いていた。







「あたしとの関わりに、どこからどこまで『あの人の為』が染み込んでいるのか分からない」


あたしを川から助け上げたのさえ、あいつの為かもしれなかった。
あいつがはじめて、あいつに関係ない人に興味を持った相手が彼女だった。

2人は、あたし達の考える恋愛関係とは一風変わった付き合いをしていた。
それはどこか親友じみて、共犯染みてもいた。

2人は似た者同士で、あの最終試験の時も一緒に生き残っていたから、これからも末永く一緒に居るかと思っていたのに、そうはならなくて、やっぱりなあと心のどこかで思った。






「だけど、責めるに責められなかった」


あいつのことを皆が責めても、彼の事を皆責めないのは、言っても意味がないと諦めているせいもあるし、彼が掴めなくて、どこからどこまで彼自身の仕業で、彼自身の為のものなのか分からないせいもあった。

全てを自分で背負い込むあいつとは似ているようで違っていた。





「あの人は、責められることに慣れ過ぎているだろうから、責められなかった」


だから、あいつのことはきっと責めやすかったんだろう。





「…昔から、ああだったの?」


だから、あいつの変化はある意味で分かりやすくて…

底知れない彼よりもまだ、「ばけもの」のように、見えたのかもしれない。


…怖かった。

変わってしまったことが怖かった。
……変わりうる要素、骨組をもともと持ち合わせていたことが、怖かった。

あたしの恋したあの真っ直ぐさは、いずれ瓦解するものだったという事実がただ悲しかった。


「あたしの入り込む隙間がないのは分かってたけど、別方向から抱き着いて、それで次に進めると思っていたのに」


彼とあいつの関係もそういえば未来に来て大きく変わっていた気がする。




「……ごめんね、あたしは、未来に来てから、あの二人とあまり深い話を出来てないから」


悲しんでいる内に、あたしとあいつは別々に行動するようになって、たまに連絡役ぐらいはしても、あいつの作ってくれたものを使って暮らしていても、直接話す事はなくなっていった。


「こちらこそ、ごめんなさい」
「ううん、……昔の話なら、もう少し出来ると思う。……お風呂に一緒に入って、話そっか」
「…!いい、それ楽しそう!」
「うん、それじゃあ、いこっか」










あの時止めればよかった。

嫌な予感、生ぬるい風があって、今日はもしかしたらうまくいかないかも、なんて思ったけどあたしは、あたしの彼氏の『頼むから近付かないでくれ』という願いを優先してしまった。








彼の言うことがどこまで本当なのかは分からなかった。
だけど、その悲痛さをあたし達は信じるしかなかった。

あいつと彼はずっと二人で居て、その彼の言うことだから事実なんだろうと、あたしは彼の顔も見ずに思った。



あたしはとうとう、幼いころから持っていた全てを喪ってしまった。
今日からは、新しい世界でもっともっとものを造っていかないといけない。




あいつの子供。
あいつにそっくりなあの子が気になってちょっかいを出す子や、面倒を見る子に、かつてなくしたあの世界を思い出した。

だけど、あいつじゃない。
真面目さや賢さは似てるけど、あのすがすがしい笑いや、騒々しい突っ込みがない。
あいつじゃないのにあいつに似てる。あの無垢さや真っ直ぐさ、色々なものを背負い込む責任感が似ている。
……あいつを知らない人々にとってはどうなんだろうな。

そう思いつつも、何も言えず、何もできない日々が続いた。

あの子と、あの子の便宜上の兄が村を出て行った日、あたしは少しほっとしていた。
もうあいつと似て非なる存在を見ないで済むと。
いつものように後ろから抱き締めてくる彼氏に、ぽつりと言う。

「大丈夫、ここに居るよ」

だってどこにも行けない。
行き方も分からない、光も見えない、だから巣に帰るほかない。

あたしの羽の骨組は、長距離飛行に向いてない。

前は身軽に、自由に飛んでいけても、隣にしっかり者の、心配性の、真面目な皆が居たのに、もう居ない。








初めて他の村の人を見た時、涙が出るほど嬉しかった。

だからあたしは嘘を吐いた。

見えなかった理由を涙で目が曇ったせいじゃなくて、茂る緑のせいにした。

だって、あんなにも幸せな世界を、壊せない。奪えない。

教えてもらった蝙蝠の童話が思い浮かんだ。

『おれたちだけがいきのこるんだ』

あたしは今、滅びる側に居るのかもしれない。





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最終更新日  2018.02.13 19:41:56
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