彼は別居のため、幼馴染に見送られ家を出た。
幼馴染は辛抱強く優しく賢くて、別居の準備も手伝ってくれた。
「あんな良いやつの何が不満なんだよ」と周囲の人が尋ねても
「そういう所が合わないんだよ」と諦めたように答える彼。
彼が借りたアパートに入ると、天井に不気味なシミを見つける。
「あれって霊の通り道らしいよ」と言う友人。
彼は仕事帰りに入ったバーで同僚と出会い、妙に意気投合し、酒の介抱のためたびたび泊めるようになった。
しかしその日から彼の借りた部屋に、人影が現れるなど不可解な現象が起こり始める。
友人の言った言葉が気になり、霊媒師を読んでお祓いをしてもらうが
「おそらく生霊が原因、うちには生霊は対処できひん」と言われる。
それ以降も心霊現象が収まる事もなく、同僚にも逃げられてしまう。
途方に暮れる彼に金縛りがおき、突然背中に付きたてられる包丁。
痛みに耐えながら後ろを向くとそこには包丁を持った同僚が居た。
場面が暗転する中、彼には同僚を後ろから絞め落とす幼馴染の姿が見えた。
それからというもの、彼は植物人間になり病院に入院していた。
「××さん、それはお医者さんに任せても…」
「いえ、こいつの世話を焼くのはいつものことなので」
それでも、横には甲斐甲斐しく彼の世話をする幼馴染が居た。
「まったく、大して仲の良くない人間を家に上げるから…お前は本当に危なっかしい」
ぶつぶつと、話しかけるように独り言を言い続ける幼馴染。
「本当に、仲がいいんだな」と見舞いに来た友人が言う。
微笑みながら「…そうだな。本当に、仕方がない…」と幼馴染はつぶやいた。