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カテゴリ:💫復活裏
人の一生の鼓動は限られているらしい。 小学生の時それを聞いた俺は、野球選手としてその鼓動を使うだけ使って、まだ見ぬ好きな人と結婚でもして、息子が生まれたら野球を教えるような、そんなおだやかな暮らしを想像していた。 『てめえ、覚えてろよ……っ碌な死に方っ、ぐぁっ!!』 「……わり、獄寺。こいつなんていってた?」 「お前いい加減イタリア語覚えろ馬鹿!……くたばれ、だとよ」 「あんがとなー、はは、そっか」 はははと笑うと、いつの間にか集まっていた部下達がそんな俺を気味悪そうに見る。 ここは執務室の真ん前、雑魚を食い止める最後の関門。もとい、そこそこ出来る奴らの囮の場所。そこに俺達右腕と左腕は立ちはだかっている。 「まるで俺らラスボスの前に居る護衛だな?」 「ラスボスとはなんだてめえ。百歩譲って十代目は始まりの街の王様だろ」 「こんな血まみれの始まりの街があってたまっかよ」 昔のツナがこんな姿を見たらきっと、悲しむだろうな。そう思うとぞくぞくする。 今の俺は、人の鼓動を止める立場の人間だ。 多くの鼓動を止めれば止めるほど、切り捨てれば切り捨てるほど、俺の鼓動は静かに穏やかになっていく。まるでそれがなんてことない日常の一風景であるように。 いや、まるで命を喰らって繋いでいるこの行為はもはや日常となってしまった。 もう、きっと胸が高鳴る事なんてない。憎しみにも悲しみにも喜びにも。 そう思う時愛おしくなるのは、人生で一番激しく心臓が打った時。……あの、大空に二人で飛んだ時。あの時いっそ一緒に死んでもいいかもしれないと思った。心臓が激しく鳴りすぎて、ああこれは漫画みたいな運命の一シーンだと思ったのだ。 「なあ獄寺、今でもお前は必死になれるか?」 ツナは、戦い過ぎた。俺達を守り過ぎた。 あいつの鼓動は時間は俺達よりもずっとずっと早く進んでしまった。 その結果が、主人の居ない館を守る俺達の今の姿だ。 惰性で続ける守護対象のない守護者。けれど止まる気力もない。走り続けている限り、まだ、あの日を思い出せる。 「当然だろ」 獄寺が炎を撒く。炎はいつも一方向だけには向けられない。まるでツナがそこに居るかのように。俺がそちらには血が飛ばないように気を付けているのと、同じ。 「十代目は、今も見ていらっしゃる」 「……そうだったらいいな」 少しだけ鼓動が早くなる。 そうだな。そう思うことにしよう。 そしたら少しでも早く、あいつの居る場所に近付けるだろうから。 ***** 君がため惜しからざりし命ゆえ長くもがなと思いそめしか お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016.08.29 01:23:29
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