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長押 綴

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2012.09.20
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こだまだけが、いつもやさしい。

わたしののぞむことばを、わたしが吐く限りこだまはやさしい。

心躍るような熱もない。
予想外の喜びもない。
だけど、決定的に傷付くこともない。

だからわたしは、こだまだけを頭に反響させる。

「あなたはつよい」


そう、わたしは弱くなんてない。
だから、わたしを甘えさせないで。
どうせ放り出してしまうくせに。


返事のメールを開くことが怖い。
永遠に妄想だけで相手の言葉を決めつけていれば、傷付かない。
自分で先に抓っていれば、他の所の痛みをまぎらわせられるように。


落ち着くと死にそうな心を、立ち止まるともう二度と歩けなくなりそうな足を、休めるのはやめてほしいのに。

思っていたよりも世界はやさしくて、だからこそわたしは死にたくなる。
邪推のこだまが、わたしに還ってくるから。

思っていたよりも世界は冷たくて、だからこそわたしには笑いが浮かぶ。
やさしさを相手のエゴであると決めつけられるから。

そうしているうちにやがてまた一人になる。
耳に残るこだま、かつてあったぬくもりの記憶だけが、わたしの唯一愛せるやさしさ。





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最終更新日  2017.08.19 02:50:32
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