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長押 綴

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2012.09.27
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カテゴリ:◎2次裏書
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同級生のAくんが結婚したと聞いたのは、数年前。

Aくんと結婚した子は明るくて気さくな女の子だった。

この子なら、人を寄せ付けないAくんでさえも絆せると思っていた。

僕は産科医だったから一人目のお産に立ち会った。

正直Aくんよりも、Aくんの兄弟のようなBくんの方が心配していてどちらが父親か分からないな、と僕はちょっと思った。

それでも。

Bくんがおめでとうと笑って言うと、Aくんもつられたように、初めて幸せを実感したように笑うから。そうして、Aくんの彼女も苦労が報われた顔をしているから。

それでいいと思っていた。


Aくんと女の子の間に二人目の子供が生まれる頃。

その時は、生憎僕は立ち会えなかった。
だけど、Aくんが何とか赤ちゃんをとりあげたと聞いてほっとした。

Aくんは、前のお産の時にBくんよりは冷静なものの、赤ちゃんを取り上げる様子を真剣な目で見詰めていたから、こういうことにその時から備えていたんだろう。



Bくんはこの大変な時に出張に行ってしまったらしく、Aくんはいつもの無表情で少し、少しだけ、愚痴をこぼしていた。

だけど、赤ちゃんの様子を僕達には見せてくれなかった。
野良猫の母親のようなものだろうと笑っていた。
そんな情がある彼について、また暖かい話題が広がった。


それがおかしなことになったのは、赤ちゃんが生まれて一週間後。

Aくんと彼女の間に生まれた子が、異様にBくんに似ていることが発覚した。


だから、Aくんは見せたくても見せられなかったのだと分かった。


「Bくん最低!」
「あの子がBくんに言い寄るわけないじゃん」
「きっとBくんがあの子を押し倒したんだよ」
「Aくんも、いくらBくんと仲良いからって、その子の味方をしないと駄目じゃん!」


Aくんはいつもの無表情で、固まったような笑顔の彼女に何か話した。


「そうだな。じゃあ、俺はBを裁く為に追いかけて来る」

その言葉に妙な違和感を覚え、僕達は止めた。
彼女が可哀想だから、傍に居てあげてと。
それなのに彼女を放って彼はBくんを追いかけていった。

彼女は絶望したような、諦めたような顔で笑っていた。

何かが壊れてしまったような。
そんな笑顔だった。

******************************************






あの馬鹿、逃げやがった。


せっかく俺が、機会を作ってやったのに。


薬で眠らせて、アレを使えるようにして、事前に話を通していた彼女に跨らせて、それを成功するまで。



喜ぶと思ったのに。

どうして逃げる。

きっと今はまだ、心の整理がついていないから突っ走ってるだけだ。

なあ、そうだろ。

あいつは責任感の強い奴だから、戻ってくれば絶対にあの子供の父親になれるはずだ。


もう一度、あの極上の笑顔を見せてくれ。


俺達の間に子供が生まれた時のような一切瑣末の不安を吹き飛ばすような笑顔で。


それに、あの子供と一緒ならきっと、試しに作った一人目も可愛がれる。



やはり、拒まれようと抑えつけてやらせてしまったほうがよかったか。
そうすれば、その時は泣き叫んでも、後になってじわじわと実感が湧いてきていたかもしれない。それが10か月過ぎればきっとあいつは逃げるに逃げられなくなっていたかもしれない。


あいつに殴られた頬が甘く痛む。



戻って来い。



Last updated 2017.11.01 17:43:48





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最終更新日  2017.11.12 22:51:38
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