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本当は勝ちたくなんてないのだ。
本当は対等でいたいのだ。 静かにお互いがその場を、その場に居るお互いを支配できていればいい。 それなのに、どうして闘おうとするのだ。どうして、心地よい距離感でいられないのだ、踏み入ってくるのだ、殴ってくるのだ。 殴りたくない。罵りたくない。 殴ったら壊してしまう、罵ったら全てが終わりになってしまう。 それなのにどうしてやって来るのだ。 やっと兄が、あの人が気持ち悪いほどの無抵抗主義を、そうして気持ち悪いほどの適切すぎる距離感を保ってきたのか分かった。分かってしまった。 あの人の背中が見えた。 僕は今あの人と同じ道を歩いているのだろうか。 だから僕は模倣する。兄さん、兄さんならどうする? 「・・・・・・新しい奴がやってきたと、面白いと思ってたのに。こんな程度?」 「やーい!やーい!!コピーやろう!!!」 「優輔さん、大丈夫ですか?あんな人たちのこと、気にしないでくださいね」 ああ、兄さんはこんな目に遭うわけがないじゃないか。 兄さんは作り上げた僕のような非暴力でなく根っからの非暴力で根っからの「兄さん」なんだから僕の対面する事情になんて向き合うわけがなくそんな世界で生きてきたからこその兄さんなわけで、そうだこれが兄さんだ、だから僕はそんな兄さんらしく振舞う必要がある、そうでなければここで生きていくことなどあの人を守ることなどできない 「ぼくは」 「ぼくは×××」 時折こぼれる独り言だけが僕の正気を保ってしまう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016.03.11 10:49:34
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