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兎×狼、狼の襲い受け(設定)
彼の白い尻尾がふりふりと不規則に揺れる。 くそ、誘ってるのか。 「うわああああああん」 彼の悲鳴を聞きながら野を駆け。 「ついてこないでよおおおおお」 増えていく擦り傷よりも余程胸に刺さる拒絶の声を受けながら藪を抜け。 「もうやだあああああああ」 全て放り出してでも逃げようとする彼を追って日の登りゆく丘を越え、 そうしていつものそこに着く。 「はい、そこまで。狼太、お前は中学に行け」 「……熊道先生。いいじゃないですか、ちょっとぐらい入れてくれたって」 「駄目なもんはだーめ」 いつもの、リミット。 「はぁ……俺と狼太が3つ違いで本当に良かった」 兎矢先輩にとっては天国の、俺にとっては悪魔の門。 くそ、逃がして堪るか。 学校と、鬼のように恐ろしい先輩の親が居る家の間の通学路しか、チャンスは無い。 だから今日も俺は、彼を追いかける。 「やだよ、なんでついてくるんだよお」 「兎矢先輩が好きだからです!」 「俺食べてもおいしくねぇよ!」 違う。そうじゃない。 違うんだ、食べたいわけじゃない。そりゃ確かに俺は兎を食べたこともあるが、別にたいしておいしくもなかったから、今では喧嘩してやり過ぎてしまった後の後始末とか、金を借りて返さない兎にちょっとした脅しを込めてとか、そういう目的でしかやっていないんだ。 「食べません」 「嘘だ」 「食べませんから」 「そう言って食べるつもりなんだろう!おっ、俺のおじさんだってそう言われてのこのこついていって、食べられちまったんだぞ!?」 「……先輩、いまどきそんな非文明的なことやるヤツ滅多にいませんって」 平和な世の中の為に、合成食料を草や虫や土から生み出す機械を作ったやつに改めて感謝だ。 お蔭でこの、先輩を追いかけ回したいという欲が、食欲から生まれているわけではないということだけは認識できるのだから。 「だったら何でいつも追いかけるのさ……」 「だって、先輩が余りに可愛くて」 「……おだてても足は止めないからな」 「本心です。それに、その足のしなやかさ、手の小ささが愛おしくて」 「……く」 おお、効いてる……!そうか、こうやって迫れば良かったのか……!!! 「その体を至近距離で見下ろして」 「ん?」 俺によって影の出来た体を舐めまわすように見て。 「あなたの一部を一時的に……その、ですね……」 「んん??」 ああ、何故だどうしてだ、これだけ、少し言うのが憚られるのは。 以前に一度だけ追い詰めた時の彼の怯えた顔と、粗相と、その時に見てしまったもの、直後の彼の「見るなよ」という泣き声、その直後の脱兎……ああ、もう。 「体の中に取り込みたいという…か……あれ?食べ…たい……?」 食べてしまいたい。 「やっぱり食べるんじゃんか!!」 「そうじゃなくてですね…っ」 待ってくれ。確かに、感覚としてはなんというか他の表現では表しきれないほど深い闇を孕んでいるそれは「食べる」としか表現できないものだけれど、それはいつもの原始的かつ代わりの効くそれとは全然違うものなのだ、と 言おうとしても兎矢先輩は俺が一瞬戸惑った隙に住処に一直線、駆け込んでいってしまった。 「……くそ」 明日も、待ち伏せしよう。 ---------------------- 【続かない】 そんな狼太が 2014/07/20 01:32:19 AM 独特の必死さ 色気 度量 闇 毒 独特の純情 そんな襲い受けが好きです 201508062304 兎狼(とろう) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.08.07 00:38:46
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