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長押 綴

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2013.08.13
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カテゴリ:🔗少プリ
~ご都合設定~
※性転換注意(直→姉  恵→弟 化)
※両親が謎の事故死をしたのでそれぞれ違う全寮制学園に隔離して入れられた直ちゃんと恵ちゃんが再会して修羅場る話
※「卒業」に則って神前式
※静流出席
※薫流・苗さん(侍姉)生きてます
※恵ちゃんと直ちゃんは両親の事を忘れることで日々をある程度平穏に送っています
 お互い会うの気まずいけど直ちゃん取られるくらいなら…と恵ちゃんが頑張る話





「お姉ちゃん!!!」
「め…恵……!?」

 このときの鍵屋崎の顔は、鳩が豆鉄砲くらったような、ずっと待ちわびた飼い主に会えた猫のような、とにかくすっごく嬉しそうな顔をしていた。

「結婚、するの?……僕、知らなかったな…」
「え、あ、ああ!すまない、恵にはどう連絡していいものか分からなくてな…」
 あからさまにしょげる弟に、鍵屋崎は思いっきり戸惑っている。サムライや来列者の事も頭の片隅にはあるんだろうけど、思いっきり放置状態。さすが僕らの学園であからさまにいちゃついているわけでもないのにヤバイと評判になったブラコンマスターだけある。

「……恵の事、思って連絡しないでいたの?」
「…恵の事を傷付け、あの学園に入ったのに……僕だけ幸せになる、だなんて……どうしても……言えなかった」
「……じゃあ、恵の為に、結婚しないでいてくれる?」
「!?」

 あからさまな結婚ダメ絶対宣言に、客席がどよめく。レイジは終始笑ってるし静流に至っては暗い笑みを浮かべながらさっきまでは持ってなかったハンディカメラを構えている。多分柿沼がおこづかいで買ったんだろうな。というかこの二人がこの状態を仕組んだんじゃないだろうな。
 ヨンイルは困ったような笑みを浮かべているが、こいつが一番今割って入りたいんじゃないかなと思えてならない。まあ、このお人よしのことだ、多分鍵屋崎が暴走しはじめたら説得すんじゃないかとも思うけどね。なんにしても直ちゃんの決めることが一番やけど、と但し書きをつけながら。

「め…恵が言うなら……っ」
「!!」
「!!!」

 鍵屋崎弟とサムライが息を飲む。だが、しかしその後に吐かれた鍵屋崎の台詞はといえば。

「…と、以前の僕なら言っただろう。……恵、僕は世界で一番君が大事だ。君の為ならなんでもできる、と思う。……だけど、恋をしたのは、僕がそういった意味で人を好きになった相手は、サムライが初めてなんだ。……ごめん、恵…」
 鍵屋崎の目からはらはらと涙。こいつが人前で感情を露わにするのを一番最初に見た記憶と重なる。……あの時も、「恵」のことで頭が一杯だったのだ。幼い頃から愛のない家庭で支え合ってきた者同士、執着は人一倍なのだろう。
 だけど、それゆえに一番大事な相手に対して鍵屋崎はトラウマを抱いてしまった。
 そしてそれを癒したのがサムライだったわけだ。あっついねー。

「……おめでとう、と言わなくてもいい。だけど、」

 そのまま弟を抱き締める鍵屋崎。弟の方もついにそれで涙腺が崩壊したようで、姉弟揃って号泣状態だ。

「……うええええええんお姉ちゃん……」
「恵殿……俺は、絶対直を幸せにする」

 感動のシーン。僕まで柄にもなくうるっときそうな。レイジはまだ笑ってるけど。

「そんなの当たり前でしょう!?」

 鍵屋崎に抱き締められ切なそうな懐かしそうな嬉しそうな顔をしていた鍵屋崎恵が突然牙を剥く。……怖っ!?
 だけど鍵屋崎はそんな弟に対してもめろめろ状態のようで、
「恵、ごめん、落ち着いてくれ」
 と言い続けている。……なんか弟の目の様子からして、落ち着く落ち着かないの問題じゃなくてなんかもっとどろっとしたもんがあるような気がするんだけど……まあ、いいか。また刃傷沙汰になったら面白いしね。

 その後帰りに静流とレイジの振りをしていた暴君と鍵屋崎弟がすれ違いざまなんか話してた気がするけど気のせい。僕は知らない。深く突っ込むとろくなことにならない気がするから。
 早く帰って、ビバリーとバームクーヘンでも食べようっと。





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最終更新日  2016.08.18 22:37:25
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