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長押 綴

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2015.07.03
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カテゴリ:◎2次裏漫
やられるまえにやれ。

そんな父上の教えが頭を過ったので、私、やってしまいました。


+*+*


その人はとても意地悪で理不尽で乱暴な人で、しかも何をとち狂ってか大嫌いな私を追い出そうと暴行や、仲間を使って殺害しようとしてきました。

幸い私の仲間がその企みを暴き、その人を止め、この地から追放してくれましたが、私の受けた心の傷は計り知れませんでした。
仲間は頼もしく、追放されたその人の悪行を世界の果てまで伝え、島流しもかくやという状況を作り上げてくれましたが、そんな生ぬるい程度で心が癒えるわけがありません。

ですが、ですから今日も私は止めもせず、ただ悲し気に、憎しみ冷めやらぬと言った体で目を伏せるのです。
その人がどうして狂気を得たのかなど、私には関係のない事柄なのですから。



そんな折、私はまた一人、死にかけました。
一度目はご存知の通り、あの人の手によって。
二度目はこの通り、あの人の手を振り払った事によって。

そういえば一度目もあの人は一応手は伸ばしたのだななんて馬鹿馬鹿しいことを思い出しました。
あんなもの、ただのポーズなのに。





目が覚めたら私は別人になっていました。

しかも妙に熱に浮かされた状態。

目の前には同様に熱に浮かされたその人が居たので私は悲鳴を上げてそこからー…布団から這い出ました。

踏まれたその人が何か言っていましたが無視しました。

果たして、這い出たその先には、8歳くらいでしょうか、可愛らしい子供が居ました。
どことなく、私達の弟分に似ておりました。

「……?」

訳のわからぬまま弟分の名前を呼ぶと、彼の口も同様に動きました。
不安だらけの中手を伸ばすと向こうの彼も手を伸ばしてきて、しかしその手は重なることなくぺたりと冷たいものに阻まれて、パニックの中私は冷たいものを叩き、叩いたまま失神しました。

後でわかればなんてことのないことです。よろけて転んだ先には丁度背の低い窓があり、暗い中、後ろからぼやけた光で照らされ反射した私の顔が映し出されたというだけのこと。

しかしその時はおろか、目覚めてからもしばらくはその状況を把握できませんでした。


訳の分からない状況でやっと私の目を覚まさせてくれたのは、私の兄でした。

全く有り難くはないのですが。

私の兄は……あの人を狂わせたと言う私の兄は、熱……後で風邪と判明したのですが……の病状から回復しつつある私に、虫でも観察するかのような目を向けてきました。
その眼鏡の奥の冷たさが、紛れもなくここは現実で、私の姿は以前とは異なり、ここに居る兄は私の知っている兄ではないということを突きつけてきたのです。


私はそれでも健気にも耐え抜きました。
好きな人の居ない世界で。
私には理解の出来ない関係性を築いてきた子の身をまとって。

……あの人が、狂気の片鱗を目に宿し出すまでは。

あの人は成程確かに皆のかしらとして相応しい人間だったのです。
皆の分まで背負い、そうして狂えるほどの器だったのです。
その人はは押し付けられた期待を背負い、自分の狂気として呑み込むことができました。
その人にとり、力があるというのは、やさしいというのは、不幸なことでした。

しかし。
そんな狂気を孕んだやさしさを目にした時、ある考えが天啓のように私の頭に浮かんだのです。

暴行される前に暴行してしまえば、この愚直過ぎる優しさの方向性は変わるのではないかと。

他者に手を掛けようとも思わない程に暗示をかけてやれば、どう狂おうとも、あのような所業を私や他の誰かにすることはなくなるのではないかと。



私の計画はうまくいきました。

その人の眠りの浅さ。
その人の体術の強さ。
その人の仲間への目配り。
その人の食品その他への神経質な目線。

これらは所詮、正攻法で一対一で表舞台で挑んだ時の課題に過ぎません。

搦め手で根回しをして動いているのが私だと悟られないようにして、そうして見事に疲れ切り、熱を出し、昔を思い返して私……いえ、正確に言えば私の外の子に甘えて眠りこけるその人を用意することが出来た時、私は私の潜在能力が空恐ろしくなりつつも、確かな達成感を感じていました。


そうして。

その人にやられたように私はその人に手を出し、
その人がやりきらなかった最後まで、私はその人にやり遂げました。
一番意外だったのは、今のこの体がきちんとその人に反応したことです。
てっきり萎えるだろうと思っていたので、あの時私はこの体の主と、身体と今や不可分になっている私の精神に呆れました。

……いえ、私のこれは単なる憎悪です。

やられるまえにやれ。

父の教えが何度も頭を過りました。きっと、そのせいでああなったのです。

あの時、快感も情動も特にありませんでした。
私は中に渦巻く焦燥と本能的な何かを持ってして、その人に叩き込み続けたのです。

途中目を覚まし、何でだとかやめろだとか離せだとか言うその人の抵抗を、ロープや猿轡程度で抑えきれるのが不安でしたが、途中からはもうその人は絆されていたので心配する必要はありませんでした。


そうして、その日から私は、その人と別の部屋で暮らすことになりました。

あの人が一人で暮らすことを希望したので、私は別の人と共に寝起きする事になったのです。

熱と教育とストレスと薬のせいで悪夢を見たのだろうと何度も私は説明しましたが、そんな私とその人はけして目を合わせようとしませんでした。

なんでどうしてとすっかりうまくなった演技を持ってして言った私も、目が合わないことにほっとしていたのでお互い様なのですが。

かくして私の大嫌いなその人と、私及び今の体の縁は途切れることとなりました。
私の使っている体の主には申し訳ない事をしたとちらりと思いましたが、あの人の躾を怠っていたのだからやはり同情の余地はありません。

しかし、最近少しだけ困った事があります。
今や私、いえこの主の顔を見掛けるだけで顔を反らすあの人。
そのしかめた顔、燻る何か物言いたげな頬、反らした先を懸命に見詰める目の光などを見ると、どこか虐めてやりたいような、無茶苦茶にしてから直後甘やかして狂わせてやりたくなるような、そんな衝動が胸を突き上げるのです。


ああ、早く元の世界に戻りたい。

それが叶わないのならば。

おかしくなったこの心身を、兄が裁き、奈落の底に突き落としてくれればいい。





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最終更新日  2018.04.30 08:59:21
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