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長押 綴

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2017.11.02
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カテゴリ:.1次題
うちのパーティは弱い。

 魔法使いは杖魔法を出せず、微弱魔力でも使用できる魔法アイテムしか使えないし。
 盗賊は簡単な薬草をモンスターから盗むくらいしかできないし。
 格闘家はすぐに服が破けるし。
 戦士も重い武器や大きい武器だとうっかり味方に攻撃しちゃうから小さいのしか使えないし。
 踊り子は気付いたら遊んでるし。
 僧侶は即死魔法を瀕死魔法にする他、自然治癒よりちょっとましなレベルの回復しかできないし。
 商人は勝手に物を買ってくる割にその荷物を人に押し付けるし。

 …俺は勇者一族なのに、一応勇者という称号を付けられているのに、あだ名が無職だし。


 だけど俺を何故か気に入ってくれた商人のおかげでこれまでなんとか冒険してこれた。


「お互いいい歳です。そろそろ地に足を着けて暮らしましょう」

「貴方方も冒険者というより、他の商人と組んで隊商として暮らした方がいいのではないですか?」

 ……今回その商人がパーティから抜けてしまった。
 もう魔法使いの魔法アイテムも、盗賊や踊り子への褒美も、格闘家の服も、戦士の武器も、僧侶の回復アイテムも買えなくなってしまう。


「……じゃあ、私も後を追うわ。故郷の魔法アイテム屋を継がないと。商品の補充にでも来てよ」
「アレお前の店のだったのか」
「…何度も言ったでしょ、新製品があるからテストするって。ま、同業他社の製品もあるけどね。研究の為に使ってみたのよ」
「そうだったのか…」
「俺っちもやめよっかなぁ。幼馴染と今度結婚すんだ。この機会に、故郷に近い人里で活動してみるわ」
「…えっ、それはどういう事だ?まさか詐欺や賭博…」
「やだなぁ、そんなんじゃねえって。目利きの才能活かして質屋やったり、モンスターから獲った薬草で売れる薬や香水調合すんだよ」
「お前それもう違う仕事…」
「じゃあ盗賊さん、私と薬の情報交換しましょうよ。私もお世話になった店で近々働く予定なんです」
「いいぜぇ」
「……格闘家、戦士、踊り子、お前らは」
「俺は服屋、っつーか防具屋を開く。いくら闘っても破けず邪魔にならない服が作りたい」
「……そうか。頑張れよ。……この分でいくと戦士は武器屋開業、踊り子は賭博屋開業ってところか」
「「あたり!」」
「冒険続けんなら寄ってってくれよ」
「ずっといついてくれてもいいぜ」
「それは遠慮しとく」


多分冒険は過去のない子供の特権で、あるいは未来の少ない老人の特権で、
それに俺はずっと気付けなかったんだ。


ーだけど、一人くらい、この世界に一人くらいは、子供がいてもいいんじゃないか。





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最終更新日  2018.11.11 13:52:14
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