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長押 綴

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2017.11.09
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カテゴリ:.1次題
お母さんが泣いてる時に近付けば、ゆるしてもらえた。
お父さんが「俺の何が分かる」って皆に言ってる時は、普段一緒にいないあたしだけは、傍に居られた。

だから、あたしは誰かが弱っている時が好きだ。

あたしが唯一愛してもらえる時だから。


誰でもいいから傍に居てほしい時。
身近な人ほど弱音を打ち明けられない時。
とにかく何かに文句を言ったり当たり散らしたりしたい時。

あたしは一緒に居てあげた。



それなのに、回復するとあの人達はあたしから離れていく。
曖昧な笑みを浮かべて、もう大丈夫だと言う。

何が大丈夫だ。

あれだけ縋って、皆を罵って、泣いていた癖に。


それでもあたしは引き留められない。
引き留めたら今度はあたしが、その人の泣くきっかけになる。怒るきっかけになる。
そしてその人は別の人に泣きつくのだ。

耐えられない。

唯一のあたしの存在意義さえ、侵犯されてしまう。
そんな夜は死にたくて死にたくてたまらなくなる。


「あっ、もしかして君~?俺、『ラム男』!」

だからあたしは、

「…はい。『ソビ』です」
「言ってたほどブスじゃないじゃ~ん」
「がっつり盛ってるんで」

今日もまた、寂しくて悲しい人の所で夜を過ごす。





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最終更新日  2018.05.03 17:45:10
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