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沢山の人を演じてきました。
僕には芝居役者は天職だったようで、盗賊、海賊、海兵、姫、王子、女王、平民、武人、ありとあらゆる人に喜ばれる人生を僕は生き抜きました。 けれど僕は一人の人間としては生きられませんでした。 何をするにしても、選択するにしても、あの王女ならどう考えるだろう、あの工場長ならこうするだろうなどと考え、あるいは選択した後の舞台での展開が頭を過り、結果軸のぶれた選択をしてしまうのです。 僕の素顔を見たいと言った元恋人達はみな、本当のあなたが分からないと言って去っていきました。 舞台が好きなこと、軸がぶれる自分に感じる不安、自分を理解してくれるかもしれないと思った人が去っていく寂しさ、それが今の僕を形作るものなのに、それを受け入れてくれる人は居ませんでした。 そうして思い返す、演じる前の赤子のような獣のような存在だったころの自分。 -いいえ、あの頃でさえ、身近な嘘を吐けないペットを、あるいは物語に登場する子供らしい子供を演じていた気がします。 最早本物の己などどこにもいないのかもしれません。 -いいえ、普通の人が一つ二つと選んで磨いた『本当の己』を、僕はあまりにも多く、そうして薄く作りすぎたのでしょう。 だから、今回このお仕事をいただいた時は、今度こそ本当の自分に近い役を演じられる、強化できると思ったのです。 -お請けします。 今回の役、『魔王』を。 【続】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018.11.14 23:58:02
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