かあさんのピンクの靴

2019.06.04

かあさんの夏用の服や下着を少し買い足した。
この前かあさんに会った時、靴がかなり汚れてたから、新しい靴も買った。

で、夫と一緒にかあさんのいる特養に持って行く。

かあさんに、いつものように自販機でジュースを買って飲ませた。

あ〜、すっきりするわ〜
といつものセリフ。

この人誰か覚えてるか？
と、夫は私を指差し、いつものセリフ。

考えてるねん。

最近はこう答えるかあさん。

わしは、誰や？
と夫が聞くと、

あんたは息子や。
と、自分の息子のことはしっかりわかっている。

あんたの嫁か？
と、少し私のこと思い出したかな？

でも、去年までの私たちの闘いの日々のことは、すっかりまるっきり忘れちゃってるってことのようだ。

自分の息子に対しても、息子であることは認識してるけど、世話になったことは何一つ覚えてない。

そのかわりに、憎しみも消えてるように見える。
前回は夫と私が帰る時、
また来てや。
きっとやで。
と名残惜しそうだった。

夫がしゃがんでかあさんの古い靴を脱がせ、新しい靴を履かせた。

何をやっても感謝されず、それどころか何もしてくれないと怒ってばかりいたかあさんなのに、よく世話してるよね。
ほんとに感心な息子だよ。

かあさんは、やっぱり、ありがとうとも言わない。
買ってきてくれたんか。
と言うだけ。

でも、ちょっぴり、嬉しそうだね。

だって、こんなにきれいな色の新しい靴なんだから。