カテゴリ:ある女の話:カリナ
今日の日記
(東京ディズニーシーのクリスマス報告と「不毛地帯」「交渉人(最終回)」感想☆ ) 「ある女の話:カリナ46(妊娠?)」 マッシーは私の言葉を聞いて即座に聞き返してきた。 「どれくらい来てないの?」 「2週間…。 もうすぐ3週間くらい…」 「病院には行った? 妊娠判定薬は?」 私は首を振って、 まだ…って答えた。 「じゃあまだわからないよね…」 私は頷いた。 「もし、赤ちゃんがいたら… どうしたいの?」 私は涙を拭きながら、 思ったことをそのまま口から出した。 「正直… 産むなんて考えられないと思った…。 でも… このオナカの中に猫の子供みたいなのがいるかと思うと… ねえ、覚えてる? 保健体育の授業。」 マッシーはどのこと?って表情で私を見た。 「まだ小さければ薬か何かで苦しみながら死んで行くんだよね? それで、大きくなっちゃったら、頭をペンチで潰して、 体から掻き出してくって… 私、そんなことしたくないの。 できないよ。」 「じゃあ… いたら産みたいんだ…?」 私は頷く。 マッシーはそれから何か考えてるようだった。 「彼… ホントに離婚してくれそう?」 「わかんない…」 また沈黙が私達を襲った。 だから悩んでる。 「もしもね… もしもそれで離婚してくれたとしても、 ミツルには子供がいるの… 私、その子から父親を取ることになっちゃうの… そんなこと…していいのかわからないよ…。 まだ小さいみたいなの。 車に絵本があったことがあって…。 何かヒーローのやつ。」 マッシーの表情は怒っているようだった。 その顔を見ると心配になってくる。 そうだよね… こんな私無責任なことをしてて、 それがわかってたなら何で子供なんて作るようなことするの? って思うよね? 挙句の果てには、こんな泣き言言って… 私は思い出す。 ミツルが失敗しちゃったかも…って言った時のこと。 「だいじょぶ、子供できたとしても、 俺ちゃんと結婚するから…。」 そう言って不安そうにする私の頭を撫でた。 今だって養育費払っててキツイみたいなのにどうやって? そんなことボンヤリ考えたのを覚えてる。 ああ、だからみんな結婚するんだ。 安心して相手と体まで繋がれるように。 そんなことを思った。 でも、これじゃあ逆だよね。 「避妊しなかったの…?」 「してたけど… 失敗したようなこと言ってた時があったから…」 マッシーはため息をついた。 そしてまた何か考えてるようだった。 「じゃあ、やっぱり彼に言った方がいいと思う…。 カリナだけの問題じゃないし、 結婚してもらえるなら、してもらった方がいいと思う。 でも…」 マッシーはそこでまた言っていいか考えてるようだった。 でも思い切ったように言った。 「もしも、彼と結婚したくないって思うんだったら、 その人のこと、ちゃんと愛情が無いなら、 私は… やめた方がいいとも思う。 もしも離婚してくれなかった時に、シングルマザー実際できると思う? 愛してるかどうかわからない男の子供を育てられる?」 「そんなこと私だってわかってるよ! 妹や弟のめんどう見てきたんだもん。 育てることが一時の感情じゃ大変だってわかってるよ。 わかってるけど、殺すようなことしちゃっていいのかなって思うんだよ!」 つい声を荒らげてしまって、 私は我に返って自己嫌悪する。 「ごめん…」 「ううん、いいよ。 わかってるから悩んでるんだし… 私も多分、同じようなことがあったら、そう思う…」 「マッシーは… ちゃんと愛してる人だから、そんなこと悩まないでしょ…?」 マッシーは私の質問にすぐに答えずに考えこんでいた。 「わからない… 今だとしたら、やっぱり悩む。 まだ、何もやりたいことやってないから…。 でも… うん、多分産むと思う。 タッチャンが産んで欲しいって言ったら… いや、どうかな… ならないとわからないかも…」 「そっか…」 私は、マッシーの言葉を聞いて、思った。 私はコレでいいのかな…って。 問題は、 私がミツルを愛してるかにあるような気がした。 何もかも捨てても、 ミツルのことを愛してるか… でも、それだけじゃなくて、 もし本当に子供を産むなら、 ミツルがいなくてもやっていけるかどうか… それだけの覚悟が私にあるのか… 「ねえ、カリナ…」 考え込む私にマッシーが穏やかな声で言った。 「考えててもしょうがないかもしれないね… だって、まだ子供がいるって決まったワケじゃないよ。」 私はマッシーの目を見る。 まっすぐに私を見る目。 「子供がいるってわかったら考えよう? それで、彼に言ってみてから考えよう? あのさ、これだけは言えるよ、カリナ。」 マッシーは決意したように言った。 「どうしてもカリナが産みたいなら、私は何でも協力する。 その男のところにいっしょに行ってもいいし、 カリナの親にいっしょに頼んでもいい。 でもね、もしも絶対産みたく無いって言うのなら、 それに協力したっていい。 誰にもバレたくないならタッチャンの名前使わせてもらえるように聞いてもいいし… とにかく… とにかくね、 私は何でも協力する。 カリナが一人で苦しまないで欲しいの。 一人で抱えて欲しくないの。」 私はマッシーの言葉を聞いて驚く。 「どうして… どうしてそこまで言ってくれるの…?」 「だって、私とカリナはほとんど家族みたいなものなんでしょ? そう言ってくれたじゃない?」 マッシーの目から涙がこぼれた。 「こんな時に何もできなくて、何が家族だよ。」 私の目からも涙が出てきた。 出てきて、 出てきて止まらない。 マッシー。 マッシー。 うん。うん。…って頷いた。 私一人じゃないんだね…って。 そうだよ…って、マッシーが私の肩を抱く。 どんな結論を出したとしても、 ずっといっしょにいるから。 カリナの人生なんだから、大事に生きてよ。 マッシーが泣きながらそう言った。 私も、うんって。 マッシーは大事な友達だよって、 女同士で抱きしめあった。 マッシーの柔らかい体が、 妙に私の気持ちを落ち着けた。 女の子って、 何て柔らかくてフンワリして気持ちいいんだろう…って思った。 それから二人で涙を拭いて、 ちょっと落ち着いて、眠ろうか?って、 顔を見合わせて笑った。 ベッドの向こう側で手を繋いで、 オヤスミって言った。 何があっても大丈夫。 きっと大丈夫。 私の心は不思議な安心感で満ちていた。 こんな状況なのに、 心がストンと落ち着いて、 温かい気持ちでいっぱいになっていた。 まるでお母さんの腕にくるまれて泣いてれば、 物事が解決したように感じた子供みたいに…。 前の話を読む 続きはまた明日 目次 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年12月18日 20時05分35秒
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