カテゴリ:ある女の話:カリナ
今日の日記(「東京DOGS(最終回ネタバレ)」感想 )
「ある女の話:カリナ50(赤木くんとの再会)」 大学4年の夏休み明け、 内定した企業から呼ばれて、簡単な健康診断を受けた。 その帰りの道端で、 私は懐かしい顔とバッタリ会った。 「あ! 赤木くん!」 すれ違って、慌てて振り返ってそう言うと、向こうも振り返っていて、 驚きと懐かしそうな顔で私の顔を見た。 「お~! カリナちゃんじゃん! ビックリした! 何?就職活動?」 赤木くんは私のスーツ姿を見て即そう言った。 そう言う彼もスーツ姿だった。 いっしょにいた男性達に、 すぐ行くんで、先に行って下さい!って声をかけた。 「俺これから会社の親睦会。 って言っても、今日は同期になる数人と人事さんだけなんだけどさ。」 「私も内定もらった会社の健康診断受けてきて。 すごい偶然だね!」 「何?この近くの会社なの?」 うんそう。って言って、私が会社名を言うと、 赤木くんの本社も近くだった。 でも、赤木くんは多分本社じゃなくて事業所かな~って言ってたけど。 「俺が本社行くことあったら、飲み行く? どう?久々にあのメンツで? アオヤンもイグチもこっちに就職決まったみたいだからさ。」 青山くんの名前を聞いてドキンとする。 青山くんのことを聞くなら今しかない。 いいね~って言いつつ、私は平静を装って聞いてみた。 「アオヤン元気?」 「ヤツは元気だよ~。 教育実習とか結構大変らしいけど…」 「え?先生になるんだ?」 「ん~、どうかな? 良かったら連絡してやってよ。 アイツ喜ぶと思うし。」 私は誤魔化すようにアハハって笑った。 「今更連絡しにくくて。 でも… 連絡しても嫌がられないかな?」 「そんなことあるワケないじゃん~! あ!俺から連絡するように言おうか? 連絡先は前といっしょなの?」 「え~!?いいよ、いいよ!」 「そんなこと言って、社交辞令じゃないか~?」 赤木くんが確信をついて私を追い詰める。 「そんなこと無いですよ?」 私はマッシー口調で言う。 赤木くんがニヤニヤした。 「怪しいな~、女の言うことは。」 「ちゃんと連絡するよ~。 あ、でも青山くんに言わないでもらっていい?」 「何で?」 「いきなりでビックリさせたいから。」 「ふーん。いいよ。 カリナちゃんってイタズラっ子なんだ?」 私は返事の代わりに笑った。 ホントはそう言われても、連絡していいのか迷ってた。 赤木くんの言う通り、連絡してもらえばいいのかもしれない。 でも、私はミツルやケンちゃんのことがあって、 携帯を変えてしまっていた。 赤木くんに連絡先を教えてまで連絡してもらうのも何だし…。 かと言って、いきなり電話もしにくい…。 ん~。 と私は考えた。 「マッシーちゃん元気?」 赤木くんがいきなり言った。 「うん。元気だよ。」 「そっか、そっか。 年賀状はお互いやりとりしてるんだけどさ、 やっぱ、カリナちゃんとアオヤンが会わないとなると、何だかだろ? それ以外の連絡は取って無いんだよ。」 「え?そうなの?」 マッシーってば、今度会ったら追求してやる! って思った。 と同時にピンと来た。 年賀状ね…。 「マッシーは年賀状に何て書いてるの?」 「赤木さんのライブがまた聴きたいです。 って感じかな? じゃあチケット買って下さい。連絡下さい。 って年賀状に書くけど、連絡が来たことなんてねーし! ったく社交辞令ばっかで人間不信になっちまうよ!」 「買って下さいって言うのが面白いんだけど~!」 「だって、社交辞令かもしれないのに送るのって何じゃん? ちゃんと金払っても来たい!って思ってくれてるならいいんだけどさ。 でも、また年賀状にはそう書いてあるんだよな~。 無料で送れって意味かな? まー送ってもいいんだけど。 って、思ってるうちに時が過ぎた。 今年もそう書いてあったら送ろうと思ってたんだけどね。 社会人前の最後のライブ。」 あはは!って私が笑った。 「多分私に遠慮してるんだよ。 そう言えば、赤木くんのライブ行きたくない?って聞かれた覚えあるもん。 行きたかったんだけど、その時は付き合ってる人がいたから…。 ごめんね! でも最後のライブは行きたいな~。」 「カリナちゃんも真面目だよな~。 別にライブくらい友達と行ってもいいでしょ?」 「だって、アオヤンいると困るじゃない?」 「困るんだ?」 赤木くんが私の目をチラリと見た。 この人、多分、勘がいい。 私は目を逸らした。 「あ、でもさっきの過去形。 今付き合ってるやついないの?」 「そうよ。いません~!」 「ふーん、じゃあアオヤンチャンスじゃん。」 「何それ?アオヤンにも選ぶ権利あるでしょ?」 「カリナちゃんから来ればイチコロでしょう!」 「何それ~?」 私が笑うと赤木くんも笑った。 じゃあホントに連絡してやってよ! って、赤木くんは一応、青山くんの番号を空で言った。 番号暗記してるなんて、 今でも、よっぽど仲良しなんだろうな…。 私は言われた番号を携帯に入れる。 かけちゃいそうで消してた番号。 アオヤンの住所はまだ自宅なの?って聞いたら、 うんそうだよ。って答えてくれた。 「絶対連絡するから、 また飲みに行こうね!」 私がそう言ったら、赤木くんは嬉しそうに笑った。 チケット、マッシーに送るから…って言って。 もしもこの時、赤木くんに会ってなかったら、 私は青山くんに年賀状を出すことも、 もう一度会うことも無かったかもしれない。 結局ずっと電話はできなくて、 ドキドキしながら青山くんに出した年賀状の返事が、 お正月に電話で返ってきた。 これが私たちの再会のきっかけだ。 前の話を読む 続きはまた明日 目次 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[ある女の話:カリナ] カテゴリの最新記事
|
|