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学校全体で取り組んだら、できるのではないだろうか。
ぼくは、本気でそう思った。 イケにそう言うと、 「お前、マジかよ。金も人手も要るんだぜ。学校全体ったってよ。勉強が大事だからよ、川を 綺麗にすることなんかに構ってくれねーぜ。子どもの考えることじゃ、ねーよ。考えるな ら、大人になってからだ。そんなことよりよ、お前は、勉強して成績上げて母ちゃん喜ばして やれよ。お前の父ちゃん。頭、良かったんだってな?母ちゃん、そこに惚れたんだろ?」 ぼくは、ちょっとがっかりした。 川を綺麗にすることが難しい話だとしても、それがどうして、父さんや母さんの話になってし まうのだろう。 イケがそんなことを言うとは、思ってもいなかった。 確かに、小川を綺麗にして、蛍を飛ばすことは、町の予算なんかも使わないとできないのか もしれない。多分、いろんな手続きなんかも必要なのだろう。 ぼくの夢。小川を綺麗にして、蛍の住めるようにしたい。 今は、そう思うしかないのかもしれない、。 イケは、ぼくの父さんや母さんのこと、どこまで知っていて話しているのだろう。 「母さんは、ほんとに父さんのこと、好きだったんだと思う。 だから、ぼくがまだ、赤ちゃんだったのに、育ててくれたんだと思うんだ。ぼくを生んでくれ た人は、病気で死んでしまったみたいだから。でも、もう、昔のことなんだ・・・。ぼくはそ のこと、今年になってから知ったばかりだけど、ね。ショックだったよ」 「やっぱり、そうなのかよ」 「やっぱりって?やっぱりってどういう意味だよ?誰かが言ってたってこと?それって、 誰?」 「まーな」 「まーなって、何だよ?」 「まーなって。まーな、だよ?」 「イケは都合が悪くなると、いつもそう言うんだ。悪いクセだよ」 「悪い癖だって、いいんだよォ」 「うーん。そうだよね。そうだよ。誰が言ってたかだって、ほんとはどうでもいいんだ。別に 聞いても、どうってこと、ないしね。もう、ぼくはどん底だから。そんな感じ、さ。だから、 どうでもいいんだ。誰が言ってても、いいんだ」 今のぼくは、不幸だと思う。でも、ぼくはそこから立ち上がれる希望を見つけた。それは、 イケと出会ったからだ。どんなクセがあっても、ぼくにとっては、イケが大事な友だちである ことには、変わりない。 例え不幸でも、イケといると何だか元気になったりする。 イケは、汚れた小川を見ていた目をぼくに向けた。 「ボスが言ったんだけど、よ」 イケは、ぽそっと洩らした。そして、自分の言ったことに慌て、それを遮るように立ち上が った。 「違うちがう!」 でも、ぼくには、はっきりと聞こえたのだ。 ボス?ワルの仲間だ!ぼくは、決然と言った。 「イケ。ボスたちと手、切れないのかよッ?ぼくは、絶対、切った方がいいと思う。切っても らいたいんだ!」 「簡単にいくかよ!いかねーんだよ!オレの一番の○○(ぐちゃっと聞き取れないように言っ た)、連れてこいだの、仲間に入れろだのって言われてるんだぜ」 イケはそう言って、黙ってしまった。近寄れないような、固い表情と雰囲気になってしまっ た。 「ぐちゃぐちゃって、誰かの名前かよ?」 訊いても、イケはもう答えなかった。 それがどういう意味だったのか。 分かったのは、ずっと後になってからだった。 ぼくは、ずっとイケに守ってもらっていたのだった。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 16, 2008 11:11:29 PM
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