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児童小説

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千菊丸2151@ お久しぶりです。 仙人草さま、お久しぶりです。 イケ君…
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仙人草21@ こんばんは。    mifessさんへ お元気でお過ごし…
mifess@ お元気でいらっしゃいますか? 生活環境が種々変化してくると、言葉に出…
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Jul 12, 2008
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 待ち伏せされていたような、嫌な気持ちになった。

有無を言わさないものも感じた。

反発したかった。

ぼくは、話したくないと言って、この場から駆け出してしまおうかと思った。

でも、見えない網に引っかかってしまったように、足が動かない。

このまま逃げたら、母さんが悲しみ、おじいちゃんが、がっかりするだろうなと一瞬だけ、思

った。

ぼくは、思わず、

「ぼくは、ぼくはッ・・・。お早う、ございます」

 何て、訳の分からないことを言ってしまったんだろう。耕ちゃんだって、こんなことは言わ

ない。

しまった、と思った。

『誰か』は、からからっと笑い飛ばして、

「おや、おや。塁くん。どうしたんだい?それは、話してもいいってことかな?」

 と、言った。

ぼくは、自分が情けなくなって、仕方なく笑った。

あっ、何で、こんなことで笑ったりしてしまったんだろう。

笑ったことで、『誰か』は、ぼくの基地に入り込んできた。

悔しかった。

「塁くん。ぼくはね。きみのお母さんと一緒になりたいと思っているんだ」

「そんなの、知ってます!今更言われなくたって!」

 ぼくは、それ以上聞きたくなかったから、遮るように言った。

「そうだよね、知ってるよね?それで、塁くんは賛成してくれるかなぁ?」

 ぼくは、黙っていた。ぼくが賛成していないことぐらい、『誰か』は分かっているはずだ。

きっと、母さんから聞いて。

「あんまり?あんまり賛成していないかな?賛成できない、何かがあったら、それを教えてほ

しいんだけどな。ぼくは、努力したいと思ってるんだ、ねえ、塁くん」

 ぼくは、頑なに黙っていた。

「今すぐ、じゃなくたって、いいんだよ。教えてって言っても、うまく言えないことだってあ

るものね。塁くんの話もよく聞いて、話し合って、納得してもらえたらなあって、思ってるん

だ、ぼくは。ぼくは、きみのお母さんを、諦められないんだ!」

 『この人』は、ぼくの目を真っ直ぐにに見てそう言い切った。

ぼくを、子どもとしてではなく、一人の人間として尊んで、そう言ったと感じられた。

ぼくは、それに、どきっとも、したのだ。

「諦められない」と言った言葉に、打ちのめされもした。

心の奥から発せられたその言葉は、雷のように、ぼくの心に響き渡っていた。

目の奥に強い光があった。

苦しげな目でもあった。でもその中にどんな困難があっても、温かい未来を作っていこうとす

る強い意思の力も感じられた。

心から母さんを愛してるんだ。そう思った時ぼくは、脱力感でいっぱいになり、そこに座り込

んでしまった。

「塁くん、どうしたっ?大丈夫かい?この話は、今度にしよう」

 『この人』は、そう言った。

「母さんのッ、母さんのどこが好きなんですか?」

 ぼくは、一番訊きたかったことを撥ね返すように、言っていた。

「そうだね。いっぱいあるんだよ。心が強くて広いところ。やさしくて温かいところ。複雑な

くせに、単純だったりするところ。きみのお父さんを心から愛してた(過去形!)ところ!」

 ぼくは一瞬、心臓が止まりそうになった。

何故、父さんを心から愛してた母さんが好きなんだろう。でも、それはどうでもいいことだっ

た。

ぼくは分かっのだ!

ぼくが訊きたかったのは、『この人』にではなくて、母さんにこそ、一番訊きたかったのだっ

ていうことを!

(母さん。母さんが愛してる人は父さんなの?それとも『この人』なの?ぼくは、母さんの本

当の気持ちが知りたい!ぼくに合わせて曲げてしまった気持ちではなくて)って!

ぼくにとって、一番大切なことは、そのことだったんだってことを!


                              つづく




 


 








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Last updated  Jul 12, 2008 03:48:56 PM
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