カテゴリ:本の感想(海外の作家)
フランツ・カフカ(高橋義孝訳)『変身』 Franz Kafka, Die Verwandlung ~新潮文庫~ *少し詳しく内容に立ち入っています。 ある朝起きると、グレーゴル・ザムザは、自分が一匹の大きな虫になっているのが分かった。外交販売をしているグレーゴルは、いままで無断遅刻をするようなことはなかったが、この朝ばかりはそうはいかない。ドア越しに声をかけてくる家族に、なんとか返事をしていたグレーゴル。しかし会社の上司がやってきて、ドア越しに声をかけられたあたりから、彼が発する言葉は誰にも理解されないものとなっていた。 妹グレーテが、グレーゴルに食事を与える役になった。なるべく彼を見ないように、事務的に仕事をこなすグレーテ。グレーゴルが、部屋を這いずり回ることに喜びを見出すと、妹はそれに気づき、部屋から家具を出してしまおうとした。そのとき、彼は唯一の抵抗として、自分が買っていた絵を覆い、まもったのだった。 家計が苦しくなり、両親も妹も仕事をさがした。家には、三人の下宿人を泊めるようになった。下宿人たちは特に問題なく暮らしていたが、グレーゴルに気づき、それに対応する家族の反応を見て、態度を変えるようになった。そして家族は、グレーゴルに対する態度を変えていく。 数年ぶりの再読です。古典を読んだ、という気分になれます。 グレーゴルは、最初のあたりでは(それが人間には聞き取れないにしても)台詞を口にするのですが、次第に一言もしゃべらなくなります(かっこつきの言葉がなくなっていきます)。地の文ではいろいろ考えているのですが。妹を音楽学校に行かせたかったなど、人間だったころに強く思っていたこと。自分に対する家族のあり方。最後には、グレーゴルは死んでしまいます。それまでグレーゴル中心の視点で物語が進んできたのですが、ここからは(当然といえば当然ですが)視点が変わっています。 どんどん人間らしさを失っていくグレーゴル。虫になった朝、「気がかりな夢」を見ていたということですが、彼が虫になる必然性は特にないだろうに、虫になり、家族から煙たがられ、そして死ぬのです。彼中心で見ると重たい物語なのですが、最後は、残された三人の家族にとっては救い(希望)のある終わり方となっています。そこにまた、どこか苦しいものを感じました。 (追記) 私が持っているのは旧版ですが、画像(アフィリエイト)は改版のものです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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