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2007.09.26
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鷺沢萠『失恋』
~新潮文庫、2004年~

 失恋をテーマにした、4つの短編が収録された短編集です。簡単な内容紹介と感想を。

「欲望」悠介と学生時代から仲の良かった黎子が、かつて結婚して離婚した共通の友人・水島が、ヤバイ世界に入っていく―。悠介は、いいやつだった水島の状況を案じながらも、自分たちになすすべはないと考えていた。そんなとき、黎子から、衝撃的な報告が届く。

「安い涙」わずかな金をもって上京した幸代は、銀座のある店に飛び込み、がむしゃらに働いた。ついに自分の店を持つにいたったが、その頃、彼女はろくでもない男と付き合っていた。大事な客との会食の日、つかまえたタクシーの運転手は、そのあたりの地理に暗い人物で…。

「記憶」理系の大学院に在籍する樹子は、知人の友人である医学部生の北沢と知り合った。最初のうち、北沢にパソコンについて教えに行くような関係であったのが、次第に、セックスもするようになる。ところが、彼には、同様の関係をもつ女が他にもいるようであり、自分は「利用」されていることに気づき始める。

「遅刻」あるバーを訪れた女性に、なんとなくひかれていた信吾の淡い思いを綴る物語。

ーーー

 解説で小池真理子さんもおっしゃるように、なんというか、一般的な失恋が描かれている、というわけではありません。4編全てに通じるわけではありませんが、恋愛関係にあるとはいえないような関係の男女に訪れる、なんらかのきっかけを描いている…といえるでしょうか。
「欲望」で語られる、相手のことを信じたかったり、救いたかったりするという思いも、自分勝手な欲望なのだろうか― ということは、ときどき考えてしまうことです。ボランティア活動にせよ、募金にせよ、それは自分勝手な欲望、いわば自己満足なのではないか―。私は、それならそれでもいいさ、と考えるようになっています。押しつけがましい「好意」「善意」は考え物ですが、たとえそれが自己満足であろうが自分勝手な欲望であろうが、それで少しでも楽になってくれる存在がいるなら、それでいいのではないか、と。そんな中、ここで描かれているある一節は救いにもなるので、反転して引用しておきます。
「ひとがひとを信じたかったり救いたかったりする思いのすべてが、自分勝手な「欲望」であるわけはなかった。そんなわけはない。そんなことがあるわけはない。そう思った」(103頁)

「安い涙」の、タクシードライバーさんが素敵でした。

「記憶」に登場する男性は、もはやなんとも…。

「遅刻」は、一種ミステリを読むような効果があって、面白かったです。

*鷺沢さんの作品について記事を書くときにはときどき書いていることですが、やはり、3年前の鷺沢さんの突然の死を思い出し、切ない思いにならずにいられません。本書のカバー見返しの著者紹介のところに、鷺沢萠(1968-2004)とあるのを見ると、たまらない気持ちになります。
 はじめて自分で買って読んだ、ミステリ以外の本は、たしか鷺沢萠さんの作品だったなぁと、思い出します。





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Last updated  2007.09.29 21:39:10
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