カテゴリ:本の感想(た行の作家)
土屋賢二『われ大いに笑う、ゆえにわれ笑う』
~文春文庫、1999年~ 土屋賢二先生のユーモアエッセイ集です。文春文庫のシリーズ2作目となります。 今回も、いくつかエッセイを紹介します。 「「犯人はだれだ」本格物ミステリ」は、意表をつくアイデアが出尽くした感があるミステリに、あらたな意外性を提案してくれています(実現したら非難囂々のアイデアかもしれませんが…)。後半の、ミステリと学問をからめた部分が、特に興味深かったです。それこそ、たとえば高田崇史さんはまさに日本史の謎をテーマにミステリを書かれていますし、学術論文にしても、魅力的な問題設定(謎の提示)と説得的な論証によってひとつの答えが導き出されるのを読むのは、まさに極上のミステリを読んでいるような感慨が得られるものです。 「わたしのギョーザをとって食べた人へ」は、有名なようですが、まさに絶品エッセイです。特に注が秀逸だと思います。そして末尾の絵も素晴らしいです。 「ロバなのか暴力団なのか」は、人間の怒りについて論じた、興味深いエッセイです。怒りっぽい人間(というか、無茶なクレームをつけてくるような人たちを連想しました)が、いってみればつまらない人間性の持ち主だということを説得的に書いていて、なるほどとうなづきながら読みました。 「カモと宝くじとホーキング博士」は、イギリス滞在中にかわした書簡を紹介する体裁のエッセイです。興味深く読みました。 同じく、「イギリス人との会話」もイギリス滞在中のことが書かれていますが、こちらは英語の家庭教師とのやりとりがとても楽しい一編です。 初読のときはまだぎこちない笑いをしながら読んだ部分もあったのですが、どんどんエッセイ集を読んでからあらためて読んでみると、初読のときよりももっと楽しく読めたように思います。 最後に収録されたエッセイ(?)「論よりだんご<論理を無視した生活>」は、矛盾について論じた一編です。なかなか矛盾はそのままに放っておけないところもありますが、矛盾を包み込むことは、気楽に生きることにつながる、ということなど、気の持ちようについてのアドバイスにもなっています。こちらも興味深いです。 というんで、全体的に楽しく興味深い1冊です。 (2009/08/14読了)
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