カテゴリ:本の感想(や・ら・わ行の作家)
横溝正史『赤い水泳着(横溝正史探偵小説コレクション1)』 ~出版芸術社、2004年~ 横溝正史さんの、戦前のレア作品も収録した作品集です。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ――― 「一個のナイフより」河原で見つけた一つのナイフ。新聞で読んだ列車内での殺人事件との関係は…? 「悲しき郵便屋」心を寄せる令嬢の元に届く手紙に記された暗号を解読した郵便屋。ある日、暗号で指定された場所に行ってみると…。 「紫の道化師」スリをしようとして相手に捕らえられた男は、高額な報酬をもらい奇妙な行動をさせられる。その後起こっていた殺人事件との関係に気づいた男の行動は…。 「乗合自動車の客」自身が被害にあった自動車事故を知る男と乗合自動車で一緒になった。異様に話しかけてくる男の目的は。 「赤い水泳着」干されていた赤い水泳着からしたたる赤い液体を目撃していた女は、翌日、水泳着の持ち主が全く別の場所で亡くなっていたことを知る。はたして事件の真相は。 「死屍を喰う虫」井戸に落ちて亡くなった親の家に住み始めた男が、再び井戸を掘り返し始めた。はたしてその真意は…。 「髑髏鬼」髑髏のような顔の男が目撃されるようになった頃、男爵邸で令嬢の誕生会が祝われていた。しかし、髑髏男がそこにも現れて…。そして、令嬢が不本意な結婚を迫られていた真相は。 「迷路の三人」迷路のある幽霊屋敷を探検していた三人の男女。しかし、一人の女性が殺された。迷路を徘徊していた脱獄囚は、しかし事件との関与を否定する。 「ある戦死」知人の戦死を知った私。友人に呼ばれてその友人のもとへ行くと、一つの指輪について調べてほしいという。戦死した知人と病床に伏す友人、そして指輪をつなぐ事件の真相は。 「盲人の手」船の中で、ある盲人に見初められた女。女は男と旅をともにするが…。 「薔薇王」日疋家と唐木子爵家の結婚式の際、花婿の唐木子爵が失踪した。しかも、唐木子爵というのは騙りであった。偽子爵の意図は…? 「木馬に乗る令嬢」鎌倉の回転木馬に、令嬢と、外国人女性が一日に何度も乗っていたのはなぜなのか…? 「八百八十番目の護謨の木」三穂子の恋人、大谷の同僚が殺された。被害者は、「O谷」というダイイングメッセージを残していた。そして、大谷は失踪。しかし、三穂子はある映画を見て、そのダイイングメッセージの意味を知り、恋人の無実を確信する。 「二千六百万年」私は眠ると、未来の国に行く夢を見た。空を飛ぶ人々の国、そして卵を産む人々の国は、それぞれ争いを続けていて…。 ――― 大がかりなトリックなどはありませんが、とにかく語り口が素敵で、物語に引き込まれます。 シャーロック・ホームズを意識した主人公が活躍(?)する「一個のナイフより」や、どろどろした人間関係が浮かび上がる「死屍を喰う虫」などのミステリも面白いですし、「ある戦死」(角川文庫『誘蛾灯』にも所収)は悲しいながらも私は好みの作品です。文庫未収録作品も収録されていて、嬉しい作品集です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.09.03 21:56:51
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