カテゴリ:本の感想(さ行の作家)
島田荘司『御手洗潔の追憶』 ~新潮文庫、2016年~ 御手洗シリーズの番外編短編集を集めた作品集です。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ――― 「御手洗潔、その時代の幻」 アメリカで「私」と御手洗さんが久々に再会し、「私」がインタヴューをします。「周囲のみなが、群れて赤信号をぞろぞろと渡っている腰抜けぞろいなら、一人青信号を待って渡ればそれは狂人です。噂にもなる、村八分にも遭う、正義と道徳の生け贄ともなる。だがそれがどうしたんです、何も恐れる必要はない。どうせ相手は腰抜けだ」(29頁)という御手洗さんの言葉は、『21世紀本格宣言』ではじめて読んだときから印象に残っています。 「天使の名前」 真珠湾奇襲の前。外務省に勤める御手洗直俊さんは、なんとかアメリカとの開戦を防ごうとします。しかし、軍部の暴走になすすべもなく…。 「石岡先生の執筆メモから。」 犬坊里美さんが、石岡さんに見せてもらった執筆メモから、気になる未発表事件を紹介してくれます。 「石岡氏への手紙」 女優・松崎レオナさんから、石岡さんへの手紙です。 「石岡先生、ロング・ロング・インタヴュー」 島田さんが、石岡さんにインタヴューをします。石岡さんの、「面白いことが言えないんです。面白くないでしょう?」という言葉への、「いや、ある意味ではとても面白いです」という島田さんの回答は秀逸だと思います。 「シアルヴィ」 スウェーデンのシアルヴィ館というカフェでの、御手洗さんや教授たちのやりとり。館に刻まれた絵の意味するものとは…? 「ミタライ・カフェ」 スウェーデンでの事件の記録者、ハインリッヒ・フォン・レーンドルフ・シュタインオルトが、ウプサラに引っ越した御手洗さんの後を追い、ウプサラに引っ越します。そして、御手洗さんに大学の中を案内してもらいます。 ――― 最後の3編以外は全て別の作品集で読んだことがありますが、それでもとても楽しめました。「天使の名前」は名作だと思います。 「石岡先生の執筆メモから。」の未発表事件が刊行されるのはいつになるのでしょうか…。2016年に刊行された『屋上の道化たち』も、このリストにはない事件ですし。今後が楽しみです。 日本人論もからめたあとがきも興味深く読みました。 ・さ行の作家一覧へ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.01.28 15:55:55
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