カテゴリ:本の感想(海外の作家)
エラリー・クイーン(井上勇訳)『エラリー・クイーンの新冒険』 ~創元推理文庫、1961年~ エラリー・クイーンの短編集です。10編の短編が収録されています。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ――― 「神の灯」見たことのない父を捜してほしい…。アリス・メイヒュウの依頼で、ソーン弁護士はその父シルヴェスターを探し出したが、アリスがアメリカに着く数日前に、シルヴェスターは亡くなっていた。弁護士の依頼で、エラリーはソーンたちとともにシルヴェスターの家に同行する。黒い家と白い家が並び立ち、故人が使っていた黒い家は荒れていた。遺族が住む白い家に宿泊することとなったエラリーたちだが、翌朝、黒い家は跡形もなく消え去っていた……。 「宝探しの冒険」断崖で三方を囲まれた岩棚に建てられたパレット少将の家に招かれたエラリー。そこで、少将の娘が、婚約者にもらった真珠の首飾りを盗まれてしまうという事件が発生した。エラリーは、犯人捜しをせず、招待客たちに、宝探しゲームを提案する。果たしてエラリーの真意は。 「がらんどう竜の冒険」カジワ氏の世話をしている看護師が、ある夜何者かに頭を殴打された。翌朝、カジワ氏は姿を消しており、カジワ氏のお気に入りだった竜のドア・ストップもなくなっていた。 「暗黒の家の冒険」遊園地の「暗黒の家」を体験していたエラリーは、全く光りのないその家の内部で死体を発見する。同じタイミングで家の中にいた人々の中に犯人はいるはずだが……。 「血をふく肖像画の冒険」夫の絵のモデルをつとめていた妻の様子がかわった日、殺人事件があったのではないかとの疑いが持ち上がる。 「人間が犬をかむ」エラリーが野球を観戦中、ホットドッグを食べていた男が、青酸中毒で死亡した。犯人はいかにして毒物を男に仕掛けたのか。 「大穴」エラリーが競馬を観戦中、首位と目されていた馬が銃撃された。 「正気にかえる」エラリーがボクシングを観戦後、八百長で負けたと思われた元チャンピオンが殺された。そしてエラリーが車に残していた外套は、何者かに盗まれていた。 「トロイヤの馬」エラリーがフットボールの観戦に行った日、チームのパトロンが持っていたサファイアが何者かに盗まれた。どこを探しても、見つからなかったが……。 ――― この短編集は、大きく三部に分かれています。 第一部が、冒頭の「神の灯」。家が消失するトリックということで有名な作品ですね。本書の中でページ数が最も多いということもありますが、トリック、構成、物語、どれをとっても抜群と思います。ちなみに、私が読んだことがある同様に家の消失を扱った物語として、二階堂黎人『ユリ迷宮』所収の「ロシア館の謎」があります。 第二部は、「○○の冒険」という作品群。「がらんどう竜の冒険」は、事件が起こってから依頼が入りますが、他はエラリーが事件に巻き込まれるという設定ですね。この中では、「宝探しの冒険」が好みでした。 第三部は、人間不信に陥っていたものの、エラリーが恋をしかけて治療したポーラ・パリスさんとスポーツ観戦に行ったときに遭遇する事件となっています。 楽しく読めた一冊です。 ・海外の作家一覧へ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.09.30 22:14:52
コメント(0) | コメントを書く
[本の感想(海外の作家)] カテゴリの最新記事
|
|