坂口安吾『不連続殺人事件』
~角川文庫、1974年~
坂口安吾さんによる有名なミステリです。横溝正史さんは、『八つ墓村』執筆の着想を本作から得たとも語っていらっしゃいます(『真説 金田一耕助』角川文庫、1979年、138-140頁参照)。
一癖もある二癖もある作家、詩人、画家たちが、裕福な邸宅に招かれて過ごしている中、複数の殺人事件が起こります。素人探偵の巨勢博士が、その謎に挑みます。
物語は、私(矢代)が、裕福な家の生まれである歌川一馬さんから、邸宅に来てほしいと依頼されるところから始まります。一馬の妹、珠緒さんが、3人の男に誘いの手紙を出し、彼らが過ごすようになったが、あまりにいがみ合うので、疎開をともにしたメンバーを集めている、というのですね。
そんな中、集められたのは、過去に関係があったの、作風が近いのに才能が違うだの、いがみ合う要因が多いメンバーたちでした。一馬さんが予期しないメンバーも呼ばれていて、その中には素人探偵の巨勢博士もいました。
誰からも嫌われる作家が殺されたのを契機に、作家仲間のメンバーや、邸宅の関係者たちが次々と殺されていきます。一馬さんの母の命日に何かが起こるという脅迫めいた手紙も届いたり、歌川家のどろどろした過去の因縁も暴かれたりと、事件は混迷を呈していきます。
登場人物が多く、最初はなかなかとっつきにくかったですが(何年も前から挑戦しようとしては挫折していました)、矢代さんが邸宅に着くあたりから、がぜん読みやすくなって、終盤は夢中で読みました。
凄惨な事件でありながら、文体は軽快で、登場人物たちの言い回しも面白く、ユーモアにもあふれています。
謎解きのシーンは圧巻です。納得の謎解きでした。
今回挫折せず読めて良かったです。良い読書体験でした。
(2021.08.14読了)
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