にゃあ実ちゃんとご近所猫87
ワクチン接種 今日はにゃあ実ちゃんのワクチン接種の日。朝のうちは冷たい風が吹いていたが、10時を回って太陽が顔を覗かせると気温が上がり空気が温まってきた。 良かった、お出掛け日和だ。バッグは昨日のうちに出しておいたので、にゃあ実ちゃんは自分も出かけることをうすうす感じている。 にゃあ実ちゃんのキャリーバッグには写真付きの迷子札が付いている。写真の裏には家族の連絡先が書いてある。こんなド派手なバッグ、しかも大切なにゃあ実ちゃんが入っているバッグを置き忘れるはずもないが、途中で何が起こるかわからない。不測の事態に備え、念には念を入れている。自分のことはテキトーなのに、どうしてにゃあ実ちゃんのこととなるとこんなに気が回るんだろう。 電車の時間もあるので、そろそろにゃあ実ちゃんに入ってもらわないと・・・、そう思ったちょうどその時、にゃあ実ちゃんがトコトコ小走りで駆けて行く。脱走?いえいえ、にゃあ実ちゃんが向かった先はトイレ。お出掛け前にちゃんと済ませる。 トイレの心配もなくなっていざ出発。病院までは徒歩と電車で35分。私鉄の下り線で7駅。この時間帯はすいている。 病院に着いて順番を待つ。待合室で別の猫ちゃんが鳴いているので、にゃあ実ちゃんも小声で鳴いている。でも1回目よりはずっと落ち着いて見える。 名前を呼ばれて診察室に入る。2月にお世話になった、にゃあ実ちゃんも大好きな女の先生だ。体重を計って次は全身チェック。先生のしなやかな指先がにゃあ実ちゃんの体をくまなく調べる。まるでマッサージをしているかのようだ。今まで病院に来て、こんなにリラックスしたにゃあ実ちゃんを見るのは初めてだ。 聴診器を当て終わると、先生は話をしながらさり気なく注射器を手にする。お尻を向けているのでにゃあ実ちゃんには見えていない。「お母さん、にゃあ実ちゃんの耳たぶを揉んでください。」耳たぶ?言われたとおり、両手でにゃあ実ちゃんの耳をつまんでモミモミする。「少し強く揉んで耳に意識を集中させてください。」モミモミモミモミ。「はい、終わりました。」 にゃあ実ちゃんは注射を打たれたことに気付いていない。 庭にやって来るどんちゃんのこと等、にゃあ実ちゃんの生活環境を話し、いろいろアドバイスをいただく。来月はいよいよ歯石取りだ。会計を済ませて帰途についた。 歩いていても電車を待つ間も車内でも、にゃあ実ちゃんは鳴かなかった。おどおどキョトキョトすることなく、ちょっぴり不安げな顔つきながらも好奇心いっぱいの時の目で、周囲を観察していた。「にゃあ実ちゃん、今日のお出掛けは楽しかった?」 きっとにゃあ実ちゃんはあの病院を、マッサージをしてくれるエステか何かだと思っているにちがいない。ストレスのない暮らし。それがにゃあ実ちゃんにとって一番大切なことだ。