今 改めて ソチ五輪を思う
尊敬するMIzumizuさんのソチ五輪についてのエントリーがありました。彼女のブログは一日16万アクセスもあるフィギュアに詳しい人。ただフォントが小さい為 此処では12サイズでお読み下さい。暫し胸糞悪い朝日の事は忘れ・・(本日3本目の日記です)ソチの隠れたキーパソン、Alexander Lakernik氏http://plaza.rakuten.co.jp/mizumizu4329/diary/201408080000/バンクーバーとソチのフィギュアスケート競技のシングルで何が一番変わったか?それは言うまでもなくメダルを争うトップスケーター達のジャンプの難度だ。男子シングルでライザチェクが4回転なしで金メダルを獲得した夜 ジャンプの難度向上に心血を注いできた過去の名選手からは批判の声が上がった。ジャンプがまるでボイタノ時代まで逆戻りしてしまった様な状況にカナダのストイコは「フィギュアスケートが死んだ夜」とまで言っている。銀メダルに終わったプルシェンコは「4回転を跳ばなければそれはもはや男子ではない」として 採点システムと審判に対する批判を繰り広げた。日本人のスケート関係者は概ね こうした声には冷淡でプルシェンコの批判を負け犬の遠吠え扱い。出てきたプロトコルを後付で説明し システムと審判を擁護しただけに終わっていた。Mizumizuの記憶の範囲で採点システム或いはジャッジングの傾向に異議らしきものを唱えたのは本田武史だけだったと思う(「個人的な意見」としながらも女子のトリプルアクセルはもっと評価されるべきだと思うと述べていた)。ほんの僅かな回転不足が転倒より多くの場合 転倒以上の減点になる。今から考えれば信じられない様なルールがまかり通ったのがバンクーバーだ。Mizumizuの目には日本人女子に2度連続で金メダルが行かないよう(そうなれば 当然ながら浅田選手に匹敵する力をもち カナダの[英雄]であるコーチが付き 国きっての有名企業がスポンサーとしてバックアップしているキム・ヨナが金メダルになる)に 男子はこれまで五輪金がないカナダに金メダルが行く様に(勿論 行き先は当時4回転がなかったP・チャンの筈だった)に数年がかりでお膳立てをしている様に見えた。バンクーバーでのフィギュア大国ロシアの凋落ぶりは目を覆うばかりだった。総てのカテゴリーで金メダルなし。ロシアスケート連盟の金銭にまつわる腐敗等も取り沙汰され(その急先鋒は矢張りプルシェンコだったが)次の自国開催のオリンピック迄に建て直せるのか誰もが懐疑的だったが結果としてロシアは「国の威信をかけても金メダルを獲る」と宣言したチーム戦で優勝し前回メダルなしに終わったペアで金銀を獲得し(この時 金メダルを「奪還した」とボロソジャル選手が語ったのが印象的だった)アイスダンスでも銅を確保した。そしてジャンプが採点のカギを握るシングル競技。その行方を「予言」した非常に重要なインタビューが2011年6月にThe Voice of Russiaに掲載されている。http://voiceofrussia.com/2011/06/20/52120950/プルシェンコのアマチュア資格復活についての記事だがここでインタビューに答えているのがAlexander Lakernik氏。ロシアスケート連盟の副会長(当時)ISU委員 そして大いに尊敬されているジャッジだ。ここで彼は個人的な意見としながらもソチ・オリンピックの男子シングルで起こるであろう事を「予言」している。ルール改正により「回転不足が 以前そうであった様には罰せられない(underrotation is not punished so much now as it was before)」様になった事が助けとなって「以前より4回転を入れるリスクを取る事に敬意が払われている(the risk in forming the quads is now respected more than it was before)」これはバンクーバーの翌年 多くの男子選手が4回転に挑んできた2011年の世界選手権の結果を踏まえての発言だ。ここでLakernik氏は ソチではバンクーバーの様な状況にはならず 多くのスケーターが4回転を1度 何人かは2度入れ4回転なしで金メダルを獲れるとは考えられないと述べている。If you look at this year Worlds, and look at how many quads there were, at least in free skating, it is already a lot, and by Sochi there will be many, many skaters with one quad, and in my opinion there will be some, maybe several skaters with two quads, that is the problem. Yes, correct, Lysacek was the first without even trying the quad,because he tried it before, but the year of the Olympics they decided not to risk. In my opinion, the situation will not be like this in Sochi, because by that time there will be many quads, and I don’t think somebody can win without a quad.難度の高いジャンプを入れる事が勝敗のカギを握るソチではまさにその通りになった。優勝した羽生選手はフリーにサルコウとトゥループの2種の4回転を入れ銀メダルのチャン選手は4回転トゥループを2度入れてきた。転倒がありながらも羽生選手が逃げ切って金メダルを獲れたのは2種類の4回転に加えて2度のトリプルアクセルを後半に組む等「超絶難度」とも言えるジャンプをフリーに組んでその多くを回りきったからだ。女子でも この傾向は顕著だった。メダルを争う女子選手は殆どが3回転-3回転を入れてきた。女子選手の多くが3-3を「跳ばなくなってしまった」バンクーバーとは雲泥の差だ。この様なジャンプ重視の競技になるよう流れを作ったのは明らかにロシアなのだ。それはロシアのフィギュア(特にシングル競技)に対する信念と言ってもいい。「フィギュアスケートは進歩して行くものだから(プルシェンコ)」「これはスポーツ。より難しい事を成した選手が勝つ者だ(タラソワ)」「演技・構成点は技術点とのバランスを取るべきだ(ミーシン)」。いずれもバンクーバー五輪由来(苦笑)の 主観に大きく左右される演技・構成点で勝敗が決まる流れを批判するものだ。そして個人的意見としながらも「ソチではバンクーバーの様な状況にはならない」と 何年も前に発言したロシアスケート連盟の重鎮。そのAlexander Lakernik氏はソチで女子Sのテクニカルコントローラーを務めた。http://www.isuresults.com/results/owg2014/SEG004OF.HTM女子フリー終了後アメリカのTV局でクワンがジャッジの構成員の人間関係に疑惑があるという声もある様だが・・・という司会者の質問を受けてソトニコワ選手とキム選手のジャンプ構成の難度の違いを挙げ「現行システム下ではソトニコワの勝利」と言い切ったが その流れを作った大物がジャッジ席にいたのだ。キム選手の演技の[芸術性や円熟味]が例えソトニコワ選手より上だったとしても其れだけでは勝てない。バンクーバーの時はWアクセルを3回跳べば3ループ並みの点になったかもしれないがWアクセルの基礎点は下がり回数は制限された。3ループを回避したら連続ジャンプのセカンドに3トゥループを2度入れる事はできなくなったのだ。キム選手のジャンプの強みはセカンドの3トゥループにあった。ダイナミックな3-3に加えて難しい入り方でWアクセル+3トゥループを軽々と決める。しかもプログラム後半に。3ループを回避した事でルール上キム選手は3-3と並ぶ彼女の強みをプログラムに入れる事ができなかった。一方のソトニコワ選手は前半の3-3に加え後半にWアクセル+3トゥループを入れ しかもセカンドのトリプルを目の覚める様な鮮やかさで回りきって降りてきた。彼女が五輪女王になったのはMizumizuには当然の事だったしクワンや田村氏の解説も同様だ。そして差のつかなかった演技・構成点。ここにMizumizuは「尊敬される」ジャッジでもあり演技審判を指導する立場にもある Lakernik氏の影響力を見る。それは政治的なものだと言えるかもしれないが不公正の証明ではない。[トップを争う選手に演技・構成点で順位をつけても差はつけない]というのは むしろ公平さの証明だといのがMizumizuの何年も前から一貫した主張だからだ。 <続く>