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テーマ:政治について(19783)
カテゴリ:書き物的なモノ
まずはこんなニュースから。
・<4年制私大>定員割れが160校、過去最多を更新 2006か2007年辺りから全入時代に突入すると言われてますが、一部人気校を除いて受験勉強というものが過去の物になりつつあります。 で、まぁ、教育産業という少子化の影響を一番受ける部分だけ取り上げると経済成長至上論者からフェアじゃないと言われそうなので、GDPに占める産業別割合の変遷から、少子化や人口縮小の影響を考えてみましょう。 基本的には、『えっ?/日記のようなもの(318)』で指摘した事の繰り返しになるのですが、 ・人口が大幅に減少するという事は、商売の機会(business chance)そのものが減るという事 ・生産量の維持そのものはだから、需要の維持とイコール関係には全く無いし、人口が減っても逆に人が豊かになるという証左には全く無らない という点を産業構造の変遷から少しだけ補足しておきます。 <産業構造に占める構成比率の変遷> まず、これは一般的に知られている事なのですが、製造業が日本経済に占める位置は、一貫して低下し続けています。 しかしながら、生産効率を上げたり機械化の促進などで生産量を確保/維持できれば、人口減少の影響は最小に抑えられるという意見は、基本的に、製造業を念頭に於いていると思われます。 『人口が減っても機械化などによって生産量は落ちないから、従って売上高は減らないけれど取り分を頭割りする人数が減るので、一人頭の取り分は増える』という考え方は、私からすれば、産業構造の変遷を(も)全く無視していると感じます。 すでにGDPの内訳においても、サービス産業が製造業を抜いています。 既に確報が出ている1980年と2003年のGDPにおける構成率を比べてみましょう。 (ソース:内閣府:平成15年度国民経済計算(93SNA)、3.経済活動別国内総生産(名目)の構成比より抽出) 1980年 製造業 28.3% サービス業 14.4% 2003年 製造業 20.8% サービス業 20.9% 世界的な過剰生産能力による価格下落圧力により、製造業が全産業に占める割合は継続して低下していくでしょう。それなのに何故、製造業の生産量が維持できれば全体の経済力が維持できると考えられるのでしょうか? 第二次産業と第三次産業という区分で比較しても、その明暗ははっきりしています。 1980年 2003年 第二次産業 38.1% 27.7% 第三次産業 62.5% 75.5% (第二次産業:鉱業、製造業、建設業、各項目の合計) (第三次産業:電気・ガス・水道業、卸売・小売業、金融・保険業、不動産業、運輸・通信業、サービス業、政府サービス生産者、対家計民間非営利サービス、各項目の合計) 製造業が作ったものを販売する小売・卸売業が産業に占める構成比率も、1980年の15.3%から2003年の13.3%に下落しています。 <労働力人口から見た場合> (参考までに)産業別の労働力人口を比較しても、同様の傾向が確認できます。 (ソース:産業(旧分類),男女別就業者数、2002年(統計局)) 1980年 2002年 製造業 24.7% 19.3% サービス業 18.1% 28.5% 上記資料を産業別に区分して見るとこうなります。(単位:万人)
詳細はリンク先の表をご覧頂くとして、注目すべきは、やはり製造業とサービス業の労働人口の推移です。 1980年 2002年 製造業 1367(24.7%) 1222(19.3%) サービス業 1001(18.1%) 1804(28.5%) 全体 5536(100%) 6330(100%) 全体が5536万人から6330万人と14%増加しているのに、製造業そのものに就労している労働力は実質的にも減少し続けています。景気の波による増減はありますが、機械化の影響を既に最大限に受けている産業でもあるからでしょう。(1974年の1443万人と1992年の1569万人がピークになっているようです) また注釈として、全体の労働力人口は1980年から2002年で、約14%増加していますが、1997年の6557万人をピークに、5年間で約237万人減少している事を付け加えておきます。(労働力の高齢化が主な影響) <まとめ> GDPに占める産業別構成比率から見ても、労働力の産業別構成比率から見ても、製造業に比重を置きすぎた議論の進め方は誤った結論をもたらし得ます。 生産量や労働力の確保だけでは、サービス産業を含む第三次産業への人口減少社会の影響から逃れられません。 教育は一番分かり易い例なのですが、『お客の数そのものが減る』事が最大の焦点になるからです。小売などの販売にしても、飲食にしても同じです。(顧客数が減った分を穴埋めする為に、インフレにして客単価が上がれば解決できるという問題でも有りません) 高齢化社会で市場の発展が見込まれる介護サービスにしても、ある時点から市場の規模は急激に縮小していきます。全体の人口に占める高齢者の比率が増えていくだけであって、高齢者そのものの数が増えていくわけでは無いからです。 サービス産業は、『ビジネスチャンス(商売取引機会)そのものの減少』の影響を最もダイレクトに受けます。基本的に在庫調整や輸出といった製造業のような手段を採れる業態(ビジネスモデル)を持ち難いからです。 金融・保険・不動産業といった業種は大量の雇用を生み出し得る業態では無く、海外進出したとしてもそのお金を国内に還流し得るかどうかは運用方針次第です。さらに不動産価格は人口(と労働力)の急激な減少に伴って、必ず、下落していきますので、不動産価格を担保の基調にした金融システムも変更を迫られてくるでしょう。 <付記:人口減少社会におけるサービス産業の生産効率の向上の意味について> 生産効率の向上は、サービス産業においては単価や賃金の引き下げにつながる場合が多い事も明記しておきます。 獲得できる顧客数がほぼ変わらないか減っているのに、2時間でできる作業が1時間でできるようになったとしても、1時間労働時間が減った事による支払い賃金の減少と、効率化は価格競争の単価切り下げ要因として『活かされる』場合が多いからです。 飲食業でいえば、今までのように回転数を重視するよりもリピータ率を上げる事を重視して、来客数の維持と客単価(落とすお金)の増加を目指すべきで、これは現在でもクーポンやポイントカードなどですでに始まっている兆候でしょう。 小売、飲食、通信サービス、サポート業などのバイトやパート、派遣や契約社員などを正規社員の代わりに採用して人件費を浮かせる形で競争力を保っていたサービス業者は、結局常時価格切り下げ圧力にさらされていますので、雇用者した個人のスキルアップなどに対しても賃金の上昇という形で報いる事は既に難しくなっています。 それが何を意味するかというと、いったんバイトやパート、ある程度の技術サポート職でも、経験を積んでも賃金の上昇が見込めないという事になり、結婚や子育てといった独身生活よりも絶対に支出増が見込まれる生活環境の変化にさらにためらいを生み、彼ら若年層の収入低下と給与の伸び率の縮小は更なる出生率の低下を招きます。 出生率の継続した低下はさらに若年層と、将来的な適齢期人口の減少、そして人口の減少の拍車をかけるので、サービス業者はさらに厳しい価格競争にさらされ続けることにもなります。(参考記事:『年収200万円以下の生活からもたらされるものは?/日記のようなもの(303)』) (一つの端的な事例として、経済成長が続いている中国でも、携帯事業などの通信サービス業などは、厳しい価格切り下げ競争にすでにさらされ続けている事を挙げておきます。) じゃあ人口減少社会におけるサービス業の出口はどこになるのか、というのはまた別の機会に書いてみます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.07.28 16:09:08
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