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戦後の我が国では国を守るということが真剣に考えられることがない。(1ページより)
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著者・編者 | 石井義哲=著 |
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出版情報 | 産經新聞出版 |
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出版年月 | 2014年5月発行 |
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本書は、第29 代航空幕僚長に就任しながら、いわゆる「田母神論文」が政府見解と対立するとされ職を解かれながら、2014 年(平成 26 年)の都知事選挙では 61 万票あまりを獲得した田母神俊雄さんと、田母神さんの 10 年下で「田母神論文」を自衛隊内に紹介したことで注意処分を受けた石井義哲さんの二人の対話形式で進む。
本書で田母神さんや石井さんが言っていることの全てが真実とは限らない。
だが、われわれは、軍事や防衛について知らないことが多すぎる。公の場で政治や宗教の話は避けられるが、軍事の話はぞれ以前の状態だ。まったく語られないのである。いくら言霊の国とはいえ、軍事の話をした途端に戦争になるわけがない。
これが、いかに異常な事態であるかということを、本書を読んであらためて感じる。
冒頭で田母神さんは「軍事力が強ければ、相手は戦争を挑んでこない」(15 ページ)と言い切る。「プロレスラーに殴りかかる愚かものはいません。強いから」という論理である。
さらに、戦力的、経済的に勝てるはずがないので、「中国は、今、日本と戦争をして、勝てるとは思っていないと思いますよ」(38 ページ)と指摘し、尖閣諸島問題は情報戦と位置づける。つまり、「米中 2軍事超大国」などと言って、「中国を大きく見せて、中国の言うことは聞いたほうがいいと思わせるための情報戦」(45 ページ)が進んでいるというのだ。
北朝鮮の場合も、「『頭がおかしいから、危ないぞ』と言われているだけ。情報戦です」(59 ページ)と言い切る。
さすがに、「『軍人は戦争をしたがっている』なんていう嘘をばらまかれているのは、日本の力を削ごうとする勢力の情報戦なのです」(181 ページ)というのは陰謀論めいているが、アニメや SF でお馴染みの情報戦に、われわれはネットを介して巻き込まれているのだと感じる。
石井さんは、アメリカがレーガノミクスで軍拡を強いてソ連を経済的に崩壊させたのと同じことを、中国に対して行おうとしているのではと指摘する。「アメリカは中国を太平洋に引きずり出そうとしているのではないか。それで一戦交えるかもしれません。そこで叩きのめしておいて、『勝者はやっぱり俺よ』という世界を、アメリカは描いているのではないかと思いますね」(69 ページ)。
田母神さんは、尖閣諸島問題に対し、都島の近くにある下地島に 3000 メートル滑走路があるので、そこで自衛隊木野発着訓練をやれば抑止力になると提案する。いままで誰も提案したことがない内容だが、現実味のある提案だ。
石井さんは、集団的自衛権について「日本とアメリカが対等であって初めて成り立つ話」(100 ページ)と指摘する。たしかに、自国を防衛できないような国が集団的自衛をできるわけがない。わが国は、総理大臣が防衛出動を発令しない回切り、個別的自衛権も行使できないからだ。