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SF 作家であり俳優の筒井康隆さんが、『噂の真相』に約 10 年連載したエッセイ集。社会を揺るがす騒ぎになった「断筆宣言」をもって、この連載は終結する。 愛煙家である筒井さんは、禁煙運動に疑問を呈する。「煙草というのは人間を情緒的にする偉大な発見であった。だが、それをよいことにして喫煙者いじめがどんどん進行すれば世の中はどうなるか」(196 ページ)。「喫埋者に対してあれだけきびしく非難していながら、飲酒者に対して甘いのはなぜか」(198 ページ)。 筒井さんは、いわゆるオタクに対して好意的である。 だが、政治家に対しては容赦ない。 マスコミの姿勢に対しては、俄然、筆が鋭くなる――「田中角栄に端を発する、マスコミの、偉いひといじめ、強いひといびりである」(67 ページ)、「差別をなくすための用語規制というのはその社会の文化的背景まで破壊するととになり、未開度が逆に進行するだけなのだ」(101 ページ)、「マスコミだけでなく日本人全体に、いじめた側を制裁することによって何かが自分の身にはね返ってくるのを恐れる感情があるように思えてならない」(114 ページ)、「泣いている遺族に向かって「今のご感想は」と訊ねる精神たるや、どのように荒廃した精神なのであろう」(224 ページ)、「おれが言いたいのは「反権力」というジャーナリスティックな姿勢もまた「権力」であるというととだ」(259 ページ)、 そして、1993 年(平成 5 年)9 月、「重ねて申しますが、是非ど理解戴きたいのは、てんかんを持つ人に運転をしてほしくないという小生の気持は、てんかん差別につながるものでは決してないということです。てんかんであった文豪ドストエフスキーは尊敬するが、彼の運転する草K は乗りたくないし、運転してほしくないという、ただそれだけのことです」(425 ページ)と書いた翌月、「あたしゃ、キれました。プッツンします」(429 ページ)と「断筆宣言」する。 本文から一部引用しただけだが、どうだろうか。2017 年(平成 29 年)の現代にも通用する省察ではないだろうか。 巻末に、『噂の真相』編集者の岡留安則さんによる、少し長めの解説が収録されている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017.05.04 11:51:41
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