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2018.07.16
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カテゴリ:書籍
AI vs.教科書が読めない子どもたち

AI vs.教科書が読めない子どもたち

 AIでは絶対に代替できない仕事の多くは、女性が担っている仕事です。(259ページより)
著者・編者新井紀子=著
出版情報東洋経済新報社
出版年月2018年2月発行

著者は、法学士であり数学者で、「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクタを務める新井紀子さん。
冒頭、新井さんは「AI が神になる?――なりません。AI が人類を滅ぼす?――滅ぼしません。シンギュラリティが到来する?――到来しません」(1 ページ)と力強く否定する。その理由は、このあとに丁寧に解説されるのだが、本書は、AI(人工知能)というテクノロジーに過大な評価や、過剰な警戒を喧伝する昨今の風潮に、論理的な一石を投じるものである。
私は前回の AI ブームのとき、エキスパートシステム構築に関わっていたのだが、今回のブームが前回と何が同じで何が違っているのか、本書を読んでよく理解できた。
そして本書が問題提起するのは、「AI では対処できない新しい仕事は、多くの人間にとっても苦手な仕事である可能性が非常に高い」(4 ページ)という厳然たる事実である。

1960 年代に始まった推論型 AI から、1980 年代のエキスパートシステム、そして現代のクイズ王「ワトソン」、リアルタイム物体検出システム「YOLO」が紹介される。そして、2011 年 2 月、ワトソンがクイズ番組『ジョパディ!』のチャンピオンを破ったというニュースが世界を駆け巡った頃、ワトソンの 3500 分の 1 の予算で「東ロボくん」プロジェクトはスタートする。

プロジェクト開始から 6 年で、東ロボくんは、大学受験生の上位 20%の成績を修め、数学では東大模試(理系)で偏差値 76.2 という驚異的な得点を叩き出した。
新井さんは、東ロボくんは東大には合格できないが、MARCH クラスなら合格できるし、将来ホワイトカラーを目指す若者たちの仕事を肩代わりするのではないかという仮説を立てる。19 世紀イギリスのラッダイト運動に代表されるように、人類は過去何度か、仕事を奪われる局面に遭遇した。だが新井さんは、AI の台頭は、そういった過去の事例とは「質的な違いを感じる」(68 ページ)という。
そして、「数年後には半沢直樹はいなくなる」という予測を 2013 年に披露した。事実、2016 年 10 月、ジャパンネット銀行がローンの与信審査を完全自動化した。

東ロボくんには、推論型、エキスパートシステム、ディープラーニングと、持てる AI 技術は全て投入された。それでも総合偏差値は 50 代後半が精一杯。新井さんは、偏差値 65 を達成することは不可能という。
かりにスーパーコンピュータを使っても偏差値は上がらないだろうし、そもそもビッグデータとしてセンター試験の過去問題すべてを学習させても、これが限界なのである。
2014 年のセンター試験・英語で、東ロボくんの成績は急落した。一方、本物の受験生の平均点はほとんど変わらなかった。受験生が「常識」ととらえていることを、東ロボくんに学習させることはできなかったのだ。英語の例文を 150 億文も学習させたのにもかかわらず。
新井さんは「けれど、AI は意味を理解しているわけではありません。AI は入力に応じて『計算』し、答えを出力しているに過ぎません」(107 ページ)という。つまり、数式化できない「常識」を扱うことができない。AI がコンピュータ・プログラムである限り、たとえスーパーコンピュータや量子コンピュータを動員したとしても、この原理原則は変わらないのだ。

新井さんは、数学は 4000 年の歴史を通して、論理、確率、統計の 3 つだけしか獲得できなかったという。演算は、すべて論理の産物である。スマホからスパコンまで、コンピュータは全て論理回路だけで演算をこなしているのだ。
だが、超越数を語るには、いまの数学では役不足なのが明らかだし、意味を記述する手段も持たない。数学では、「私はあなたが好きだ」と「私はカレーライスが好きだ」の意味の違いを記述できないのだ。
新井さんは、意味が理解できないことが、「真の意味での AI が実現できない大きな壁」(120 ページ)になっていると指摘する。
そして、自動作曲や機械翻訳の実例を挙げ、シンギュラリティが到来しないことを明快に説明する。また、Google や IBM が AI 技術を無償公開していることに触れ、AI 技術で儲けることができない表れだと指摘する。

東ロボくんと並行して、新井さんは人間が数学の問題を解く能力を解析するために、大学生数学基本調査を実施した。ところが予想外に成績が振るわず、さらに 2 万 5 千人の中高校生の基礎的読解力(RST;リーディングスキルテスト)を調査することにした。
その結果、AI がまだ到達していない「同義分判定」「推論」「イメージ同定」「具体例同定」について、生徒たちもまた到達していないという事実が明らかになった。新井さんは、「中学生の半数は、中学校の教科書が読めていない状況」(215 ページ)と判断した。
新井さんは、「ドリルと暗記で定期テストを乗りきったりすることはできます。けれども、レポートの意味や、テストの意味は理解できません。AI に似ています。AI に似ているということは、AI に代替されやすい能力だということです」(230 ページ)と警鐘を鳴らす。

けれども、読解力を向上させるための科学的な手段は見つかっていないという。新井さんの説明は最後まで論理的であり、読者を裏切らない。
ここまで読んで、私はこう感じた――読解力、意味を理解する能力は、AI が達成できていない、すなわち数学的に記述できないものである以上、それを養う手段もまた、現代数学では記述できないはずである。となると、数学的でない手段、すなわち再現性のない手段を導入してはどうか。たとえば、最前線で研究している学者や芸術家との対話、旅行やスポーツといったレジャー。こういった「遊び」を心から楽しむことが、AI で代替できない能力を養う王道なのではないか。






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最終更新日  2018.07.16 20:25:56
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