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著者は、イスラエル人歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリさん。本書は、世界で 800 万部を超えるベストセラーとなったそうだ。 いまから 7 万年前、アフリカ大陸を再出発したホモ・サピエンスは、ホモ・エレクトスやネアンデルタール人にない高い認知的能力を備えた「認知革命」を達成し、唯一の人類になったと考えられている。抽象概念を扱えるようになったホモ・サピエンスは、チンパンジーなどの「群れ」とは比較にならない大規模な組織を統率できるようになった。 1 万 2 千年前の農業革命が始まるまで、サピエンスは狩猟採集の生活にあった。この時代は、健康に良い多様な食材を手に入れ、労働時間が短く、感染症も少ない「原初の豊かな社会」であった。サピエンスは集団生活を営んでおり、一夫一婦制ではなかった。ハラリさんは、現代の不倫は狩猟採集時代の記憶の名残ではないかと指摘する。 サピエンスが南太平洋を航行した証拠は発見されていないものの、いまから 4 万 5 千年前にオーストラリア大陸へ渡った。そこで、独自に進化した動物の多くを絶滅させた。一方、脂肪に富むマンモスなどを追った集団は、陸伝いにシベリアからアラスカへ移動し、1 万年前には南アメリカの南端へ到達した。ここでも、多くの動物を絶滅させてきた。ハラリさんは、サピエンスを「史上最も危険な種」と書いている。 ハラリさんは、1 万 2 千年前から始まった農業革命を「史上最大の詐欺」という。なぜなら、狩猟採集の時代より労働時間が増え、得られる食料が減ったからだ。だが、単位面積あたりの収穫量が増えたことにより、人口は爆発的に増えることになる。酪農も同様。増えた人口を養うために、サピエンスの農作業は次第に過酷なものとなっていった。 ハラリさんは、ハンムラビ法典は神話と同質と説く。たしかに、その前文にはバビロニアの神々の名前が列挙され、そうした神々の名の下に法典が作られたと記されている。 農業革命を経て、数千~数万人の住民を養う穀物を生産できるようになったものの、そうした記録はサピエンスの脳の記憶に収まりきらない。そこで「書記」が登場する。最初のシュメール文字は、散文を書くためのものではなく、こうした定量記録を残すためのものだった。その子孫がインカのキープ文字である。散文が書けなくても、インカ人は不便を感じなかったのであろう。 法律、体制や数字といったサピエンスの「神話=想像上の産物」の副産物として、ヒエラルキーが発生する。社会的地位は、べつに生物学的な根拠があるわけではない。ハラリさんは、「これらのヒエラルキーはすべて人類の想像力の産物」(173 ページ)という。
最終更新日
2019.01.23 11:17:11
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