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著者は、イスラエル人歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリさん。前作『サピエンス全史』の最後で触れた、人類の幸福や超ホモ・サピエンスについて、具体的に説明してゆく。 冒頭で、ハラリさんは、人類はこれまでの歴史で、常に飢饉と疫病と戦争という 3 つの問題に取り組んできたとしたうえで、現代社会はこれらの問題を解決しつつあり、人類は次に不死と幸福と神性を目標に掲げるのではないかと推測する。「人間は至福と不死を追い求めることで、じつは自らを神にアップグレードしようとしている」(59 ページ)と指摘する。 「第1部 ホモ・サピエンスが世界を征服する」で、ハラリさんは、「心と魂」について論じる。「心」「魂」「精神」「情動」という複数の表記があり混乱するが、読み込んでゆくと、「心は魂とは完全に別物」(134 ページ)、「心は、苦痛や快楽、怒り、愛といった主観的経験の流れ」としたうえで、「心=精神=情動」は動物も持っているという立場をとる。 ハラリさんは、現実には、主観的現実、客観的現実、そして共同主観的現実の 3種類があるという。動物も主観的・客観的現実は認識できるが、唯一、サピエンスだけが共同主観的現実を認識できると主張する。 さらに、「共同主観的なものを生み出すこの能力は、人間と動物を分けるだけではなく、人文科学と生命科学も隔てている」(188 ページ)のだという。なせなら、「歴史学者が神や国家といった共同主観的なものの発展を理解しようとするのに対して、生物学者はそのようなものの存在はほとんど認めない」からだ。 共同主観的現実は、たとえそれが虚構であっても効力を発揮する。 「脳と心」というお題で小論文を書いたのは 30 年以上前の話だ。だが、当時より突っ込んだ内容を書く自信がない。研究をしていないというのは言い訳に過ぎない。この 30 年間、多くの優秀な研究者に出会い、話をする機会があった――にもかかわらず、にである。 ハラリさんは、「人間の法や規範や価値観に超人間的な正当性を与える網羅的な物語なら、そのどれもが宗教だ」(223 ページ)という。宗教は、科学ができない倫理的な判断を下すこともできる。だから、科学とは競合関係ではなく、協力関係にあるという。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019.01.24 12:02:47
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