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カテゴリ:書籍
宇宙・0・無限大

宇宙・0・無限大

 神は数学者かもしれない。しかし、ゼロと無限は嫌いである。(184ページ)
著者・編者谷口義明=著
出版情報光文社
出版年月2023年6月発行

著者は、すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡を使って宇宙の深遠をのぞく天文学者の谷口義明さん。本書では、
-この宇宙に0はあるのか?
-この宇宙に無限大はあるのか?
-この宇宙に瞬間はあるのか?
-この宇宙に永遠はあるのか?
という素朴な疑問について、難しい数式を使わずに謎解きしていく。
結論を書くとネタバレになってしまうが、私たちプログラマが、バリデーションチェックとして、ゼロ除算や無限発散を徹底的に排除する習性を説明する仮説をいただけた者として感謝している(笑)。

第1章では、ゼロ無限の概念を振り返る。
まず、「ゼロの導入」の歴史を振り返る。フランスの数学者ピエール=シモン・ラプラスは、ゼロについて、「まさにその単純さのおかげで、また、この概念によってあらゆる計算が容易になっているおかげで、私たちの算術は第1級の発明になっているのだ」(31ページ)と書き残しているという。
たしかに便利な概念ではあるのだが、除数にゼロがあらわれると、とんでもないことになる。ローレンツ変換によれば、時間は無限に引き延ばされ、重力は無限大に大きくなってしまう。桁あふれどころの騒ぎではないので、初めて除算機能を内蔵した16ビットCPU「8086」は、最優先の割り込みとして「ゼロ除算エラー」を発生するようになっている。
ゼロを導入したのはインド文明とされているが、それより古く、多くの哲学者(≒数学者)を輩出した古代ギリシア人がゼロに気付いていなかったわけはないと思う。では、なぜ古代ギリシアで「ゼロが導入」されたかったのか――古代ギリシア人達は気付いていたのではないだろうか、宇宙の実像に。

第2章では、宇宙に無限があるかどうかを考える。
地動説を提唱したコペルニクスは、宇宙の大きさは有限だと考えていた。イギリスの物理学者トーマス・ディッグスは、コペルニクスの著書『天球の回転について』を英訳し、星の世界は無限というアイデアを付け足した。同じ頃、修道士ジョルダーノ・ブルーノは宇宙は無限として、地球屋人類を相対化した罪で火炙りにされた。
宇宙が無限という話に付いて回るのは、「オルバースのパラドックス」だが、じつは無限やビッグバンを持ち出さなくてもこのパラドックスは解ける。
谷口さんは、ここでウロボロスの図を掲げる。
プログラマにとっては無限も厄介な代物である。たとえばループ処理が終わらなくなる無限ループ――リソースを食い潰してシステムダウンする。悪夢である。ウロボロス、滅ぶべし(笑)。
量子の世界では「繰り込み理論」のおかげで、物理量が無限大に発散することは免れた(94ページ)。マクロの世界でも、こうした制約が欲しいものだ。

第3章では、宇宙にゼロがあるかどうかを考える。
宇宙の誕生まで時間を遡ろうとすると、現代の物理学では、プランク時間(10のマイナス44乗秒)より前に遡ることができない。また、逆2乗の法則にしたがう引力やクーロン力は、2つ物体の距離をゼロにすると破綻する。物理で仮置きする質点も、考えてみればおかしな概念である。質点の密度が無限大になってしまうからだ。
絶対零度はあるだろうか――天の川銀河の中心にある太陽質量の約400万倍の質量を持つ超大質量ブラックホールの熱放射は、だいたい100兆分の1Kという(159ページ)。宇宙で最も冷たい物質のはずだが、それでも絶対零度ではない。

第4章では、宇宙に永遠があるかどうかを考える。
この宇宙の未来像として、ビッグ・フリーズ、ビッグ・リップ、ビッグ・クランチ、サイクリック宇宙、真空崩壊を取り上げる。『宇宙の終わりに何が起こるのか』(ケイティ・マック/吉田 三知世,2021年09月)や『時間の終わりまで』(ブライアン・グリーン/青木 薫,2023年05月)でも取り上げた話題であるが、いずれにしても、時間が計測できる限り永遠は訪れない。

第2章と3章の巻末に「まとめ」があり、谷口さんが言わんとしていることがよく理解できた。
ゼロと無限に対するバリデーションチェックにより一層精を出すとともに、公にゼロと無限を使うとき、少し使い方を変えていこうと思う。それは、「方便」として使っているのだということで。






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最終更新日  2023.08.05 12:57:04
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