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2024.03.02
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カテゴリ:書籍
新・宇宙戦争

新・宇宙戦争

 実際のハイブリッド戦争においては、当初、サイバー空間や宇宙空間での不法行為や攻撃から始まり、サイバー攻撃や非物理的な攻撃によって、運用中の人工衛星が複数、同時に停止し、電力、交通、金融などの社会システムが誤作動を起こすと見られます。さらにはSNS上で膨大なデマやうそが流れる中で、大規模停電が長期化し、公共交通機関が大幅に乱れ、金融システムに支障をきたすなど、市民の生活の混乱が長引くことによって、国内の混乱や治安の悪化が生じる可能性があります。
著者・編者長島純=著
出版情報PHP研究所
出版年月2024年1月発行

著者は、航空教育集団司令部幕僚長、航空自衛隊幹部学校校長を歴任後、退官した自衛官で、最終階級は空将という長島純さん。

宇宙は、科学技術のフロンティアとして、また経済成長の推進基盤として大きな期待をかけられている。そこはまた、安全保障上の駆け引きの場ともなってきた。
人類は二度の世界大戦を経て、犠牲者のいない戦争を志向するようになった。それは、物理的な攻撃(陸海空の軍事力)とサイバー攻撃、欺瞞、妨害行為、偽情報の流布などの非物理的攻撃を組み合わせたハイブリッド戦争である。実際、ロシアは2022年2月の軍事侵攻前後、新たなハイブリッド攻撃をウクライナに仕掛けた。一方のウクライナ軍は、宇宙システムを利用した砲撃支援システム「GIS Arta」を戦場に投入し、GPSやドローンからのデジタルデータ情報の処理および伝達速度を速めて、ロシア軍に対する反撃の時間を大幅に縮めることにも成功した。
2019年に、中国は国防白書で「智能化戦争(Intelligentized Warfare)」を、米陸軍は「SF:2030-2050年の戦争の未来像」をそれぞれ公表し、AIを利用した戦争について語っている。

中国は、1956年に毛沢東国家主席が掲げたスローガン「両弾一星」の下、国家プロジェクトとして核兵器を運搬する手段として宇宙開発に着手した。中国が高い技術力を必要とする宇宙の軍事利用を加速できる背景には、国家規模で推進する「軍民融合(MCF)」戦略の存在がある。
2007年1月11日、中国は地上から中距離弾道ミサイルを発射し、運用終了した気象衛星を破壊するというDA-ASAT(Direct-Ascent Anti-Satellite;直接上昇型ミサイルによる衛星攻撃)を行い、大量のスペースデブリを撒き散らした。
この他、宇宙空間に配置され別の衛星などを攻撃するために設計された攻撃兵器「共軌道ASAT」や、高出力マイクロ波(HPM)兵器」が実用化されている。

米国の戦略的抑止は、核戦力による機動力と敵の兵器がいつ発射されたのかを知る探知能力から成り立っている。だが、極超音速兵器の登場によって、この能力が否定されるようになると、核による先制攻撃を引き起こしかねない。
NATO加盟国の中で2018年に、米国が初めて「国家宇宙戦略」を立案し、宇宙が戦闘領域に変化したことを認めた。2019年9月に、フランスに宇宙司令部が置かれた。

日本は、2022年12月16日に新たな国家安全保障戦略、国家防衛戦略及び防衛力整備計画の3つの文書の閣議決定を行い、岸田総理は新たに強化すべき能力として、宇宙・サイバー・電磁波などの新たな領域(新領域)への対応能力、経空脅威に対する反撃能力、中国の脅威を意識した南西地域の防衛能力に言及した。

2015年にパリで開催されたCOP21では「パリ協定」が採択され、これまで聖域だった軍隊の温室効果ガスにもメスが入った。
これを受けフランス軍では、熱帯夜砂漠と言った過酷な環境でも兵士が任務を全うできるよう、兵士の心身を強化改造する技術の研究を進めている。

長島さんは SFプロトタイピングの条件として
+自然科学の制約と技術の進歩に基づくこと
+人間が主体的役割を果たすこと
+人間の願望が含まれていること
の3つを挙げ、この手法を使って未来の戦争をシミュレーションしてみせる。
超大国テュポン国から分離独立しようとするベンヌ国との間での戦いの様子が時系列を追って描かれる。戦いは2027年にはじまり、テュポン国はベンヌ国併合に成功したものの、2049年に至っても終息をみていない。

最後に、著者の長島さんと、多摩大学客員教授で地政学の研究家である奥山真治さんとの対話が収録されている。
2人は、戦争は人間同士の根源的な戦いであり、その形態が変わっても、人勝ちを流して命を奪われるという事実は変わらないだろうという想定のもと、無人機を操縦する兵士への心理的負担や人間の脳と兵器が直接繋がるBMI(Brain Machine Interface)を考え、新しい戦争では民間への被害が大きくなる可能性について言及する。また、爆撃機から伝染ビラを撒くかつての宣伝戦より、ネットから攻撃の相手を特定して効果的かつ集中的に情報を流して行動変容させる認知戦のおそろしさを説く。

本書は『新・宇宙戦争』と題されているが、宇宙における戦略・戦術が中心というわけではなく、宇宙空間やサイバー空間で展開する未来の戦争形態について論じている。
SFファンとしては、最終章の SFプロトタイピングによる仮想のストーリーが興味深かった。2027年にはじまったテュポン国の戦争が、22年を経過しても終息せず、戦場はサイバー空間から宇宙空間へ拡散し、地球環境も悪化する――。
ここで思い出すのはジェームズ・P・ホーガンのSF『巨人たちの星』――地球人より進んだ科学文明をもつ宇宙人ガニメアン/テューリアンが作ったAIシステム「ゾラック」「ヴィザー」がサイバー空間に偽情報を流し、惑星間戦争を攪乱するというストーリーだ。まさに「新・宇宙戦争」である。
このSFでは、敵を殲滅することができたので戦争は終結するのだが、現実の戦争で敵国を〈殲滅〉することはできないだろう。戦争は外交の手段だと言われることが多いが、それは戦争が始まるまでの話で、いざ戦争が始まってしまうと、感情が戦局を支配する――結局、敵対する宗教/民族/文化がある限り、戦争状態は継続する。お互いに大量の血を流し、戦争を継続する意志が挫けた時点で、いったんは戦争状態が停止する。
だが、サイバー空間や宇宙空間で、AIの力を借りて〈それほど血を流さない戦争〉を続けていると、かえって戦争状態は長引くのではないだろうか。長島さんと奥山さんの対談の後半に、新しい戦争では民間への被害が甚大になるという指摘も不気味である。
ウクライナ戦争イスラエルのガザ攻撃の経過を見ていると、こうした予想が現実のものになるのではないかと不安でならない。
第一次・第二次世界大戦という総力戦を経験した人類は、戦争に莫大なコスト(死傷者を含め)がかかることに恐怖を感じている。サイバー空間を使った戦争は低コストかもしれないが、それが長引けば、トータルコストは総力戦と大して変わらないものになってしまうのではないだろうか






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最終更新日  2024.03.02 17:47:07
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