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2007/04/09
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カテゴリ:株式投資
ことしの東京大学の日本史の入試問題の第1問は、
日本の古代国家は、銭貨を発行し、その使用を促進するためにさまざまな政策を実行してきた。銭貨についての政策の変遷を踏まえて、8世紀末に(5)の法令が出されるようになった理由を、6行以内で説明しなさい。
というものでした。
(5)の法令と言うのは、798年に出された「蓄銭禁止令」です。
(1)~(5)まで、時の政府が、物々交換経済から貨幣経済移行を推進するために、711年に「蓄銭叙位令」(こちらのサイトが詳しく説明しています)という法令を出し、銭貨を溜め込んだものが位階をお金で買えるようにしたのですが、地方豪族が競って蓄銭に走ったために、逆に市中に流通する銭貨が不足する事態となり、逆に、蓄銭することを禁止してしまった、という歴史的経緯が書いてあります。
この問題は、798年に「蓄銭禁止令」を出した理由を説明させるという問題です。
解答では、「蓄銭禁止令」が銭貨の流通に一定の寄与をしたことを説明し、次第に蓄銭により流通が阻害されるようになり、「蓄銭禁止令」に至ったことを説明すればよいわけで、歴史に関する子細な事項の暗記が必要なわけではなく、歴史観さえしっかりしていればよい、という東大日本史の特徴的な問題です。

日経BPのページで、経済評論家の森永卓郎氏が「再利上げは三角合併にアシストだったのか」という論考を書いていらっしゃる(日経BPのページは読者登録をすれば無料で閲覧できます。こちら)のですが、森永氏は、2月27日の上海を起点とした株価低迷で、諸外国では大して株価下落していないのに、日本で大きく株価下落したのは、2月21日の日銀の利上げの影響によるものであり、このために日本の株価が低迷し、5月以降の外資による三角合併をアシストすることになってしまう、というように主張されています。
このレポートの一つ前の回のレポートでは、森永氏は、東証が日興コーディアル・グループを上場廃止する方針かと思えば、結果的には上場維持した、という経緯について、米国シティ・グループによる日興コーディアル・グループの買収を、東証がサポートしたのに等しい、なぜ、日本は、外資に日本企業を安売りしてしまうのか、というように書いています。

かつて、'98年に長銀が破綻したときに、政府が8兆円もの公的資金を投入して預金者を保護し、破綻処理を負えた後に、政府が10億円で売りに出したとき、米国リップルウッドが買収し、新生銀行となりました。
2004年に新生銀行が上場した際に、リップルウッドは2200億円もの上場益を手に入れました(Wikipediaの長銀問題の解説を参照)。
このとき、日本人は、リップルウッドのことを米国ハゲタカ・ファンドと呼び、激しい非難の声を浴びせました。
ですが、長銀が10億円で売りに出されたときに、手を挙げる日本人はいなかったのです。
これで、日本人にリップルウッドを非難する資格があるのでしょうか?

東大経済学部卒の森永卓郎氏は、人気経済評論家なので、日本人に耳当たりの良いことを言う使命を感じているのだろうと思います。
日銀が、東証が、米国ハゲタカ・ファンドに協力している、という言い方をすれば、日本人の耳には心地よく響くのでしょう。
森永氏は、ライブドアのときも、実に派手に叩いてくれました。
お陰様をもちまして、きょうもライブドアと同列のIT企業、楽天の株価は見事に真っ逆さまです。
昨年、「共謀罪」が法案提出された際に、衆議院議員会館で民主党主催の反対集会があり、森永氏の共謀罪反対声明を伺ったりもしたので、あまり、森永氏の批判などはしたくないのですが、当ブログでは、重ねて日本人の投資行動の問題点(例えば、3月31日の日記を参照)を書いてきました。
私は、地獄の底に沈んでいる人間ですので、日本人のウケを狙う文章を書く義務などはありません。

日銀にしても、東証にしても、ボランティア団体ではなく、一企業です。
公的性格が強いとしても、そこに働いている人もまた一市民であり、利益を上げようと思うのは当然です。
私は、東証がライブドアを上場廃止にしたのに、日興コーディアル・グループを上場維持にするのは不公平だと思うし、村上ファンドに出資していながら総裁の座に居座り続けようとする人が最高責任者である日銀が日本経済の舵取りをして良いのか、とは、思いますが、東証の上場継続の判断、日銀の金利上昇の判断が、米国を助けるものだと主張するのは、日本人の反省が足りない、のではないか、と、思うのです。

最初に掲げた東大の日本史の入試問題ですが、単に日本史の基礎事項の理解を見よう、というのではなく、まさに、今日的な問題提起をしているように、私は感じます。
8世紀、時の政府の狙いは、銭貨を流通させて、日本に中国と同様の貨幣経済を実現することにあるわけです。
ところが、当時の地方豪族は、そうした政府の意図と無関係に、利権確保のために蓄財に走るわけです。
今日、海外の金利高を狙った円キャリー・トレードなどにより、海外投資ばかりに熱心な日本人投資家の問題点と、奈良時代の地方豪族の行動とが、本質的に変わっていない、ということを、この入試問題は教えてくれます。
日本人は、歴史に学び、歴史を教訓として、過去を反省しつつ、新たな境地への挑戦をするべきです。
「米国ハゲタカ・ファンドに利益を持って行かれてしまうぞ」、「日銀が悪い、東証が悪い」というような、外部に責任転嫁するような論調は、日本人に対するウケは良いかも知れませんが、これでは、本質的な解決には至らないと私は思います。
日本人投資家が、日本の将来を見据えた投資活動を行うように望みたいと思います。

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最終更新日  2007/04/09 08:50:53 PM
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