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ラスタ・パスタのレレ日記

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2006年03月13日
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テーマ:Jazz(1961)
カテゴリ:音楽:CD
15歳の美少年ピアニスト、オースティン・ペラルタ(Austin Peralta)!
彼のデビューCDが素晴しい。

ピアノ、ベース、ドラムスのジャズ・トリオ。
彼がレコーディングした時には、まだ14歳だったという。


早熟の天才。CD『処女航海(Maiden Voage)』 の出来が素晴しく、とても新人のトリオとは思えない卓越した表現力。

オースティン・ペラルタ/処女航海(紙ジャケット仕様)

CDの1曲目から、このトリオの演奏の凄さが伝わってくる。

マッコイ・タイナー (p)の「パッション・ダンス」

煌びやかな彼のピアノに呼応するかのように、ドラムスも勢いよく叩きまわる。
1曲目から、強力なドラム・ソロがあるが、ソロだけでなく、曲全体で暴れまわっているといっていい。

ビリー・キルソン というドラマーだが、彼はラリー・カルトンやボブ・ジェームス、デイブ・ホーランドなどとの共演があり、大野俊三(tp)とも共演経験がある実力派。

一部、 音楽雑誌では、ビリー・キルソンが前に出すぎだ、と書いている評論家もいるが、ぼくはそう思わない。

オースティン・ペラルタの若くはじけるピアノ・タッチに呼応し、あおりあおられて、新しい形のピアノ・トリオの演奏を作り出しているのではないかと思う。

一方、ベースは、今は巨匠といってもいいロン・カーター

ビリー・キルソンとは対照的に、自分をおさえ気味にして、全体のバランスをとりながらバックアップしている。彼の演奏の安定感がこのトリオの新しさを支えている。

みんなご承知だと思うが、ロン・カーターは昔、洋酒のCFに出た。その時のロン・カーターの姿に憧れ、自分でもベースを抱えながらCFに出たのが、今はなき、いかりや長介さん。

なぜか、二人のあたたかい人間性のイメージが重なる。


1曲目で、いきなり、迫力あるピアノ・トリオでスタートしながら、

2曲目で、映画『いそしぎ』 のテーマ曲を持ってきて、すこしゆるんで見せるところがまた憎い。

ピアノの可憐な響きと、ロン・カーターの深いウッド・ベースの音が折り重なる。

3曲目は、タイトル・チューン。ハービー・ハンコック の大傑作『処女航海』 だ!

ピアノのイントロ、スティックの音、ベースの呼吸。
はじまってすぐに、未知への期待感をいだかせるイントロ。

もちろん、ハービー・ハンコックの原曲がとてもいいということもある。
しかし、この曲を真正面から取り組んだオースティン・ペランタにも脱帽だ。

ビリー・キルソンのドラム・ソロ。

彼のドラム・ソロを、ロックのドラムスが好きな人にもぜひ聴いてもらいたい。
ロックのような重装備はしていないとおもうが、ここまでダイナミックに表現できるのだ。

ドラム・ソロが終わって、アップ・テンポになった主旋律が戻り、トリオの演奏が白熱してくる。

ここでも、ピアノの演奏を後ろからあおるようなドラムス。速いパッセージのピアノのアドリブ。安定したベースライン。

このCDのひとつのハイライト曲であると思う。


次の曲は、『グリーン・ドルフィン・ストリート』
映画の主題歌、マイルス・デイビス も取り上げた曲らしい。

ここでは、ロン・カーターのベース・ソロが聴かれる。
オースティン・ペラルタのピアノも心なしか、軽やかだ。


5曲目は、これも今やジャズの一大スタンダードになった感のある、チックコリア

『スペイン』

この名曲に対する、オースティン・ペラルタの解釈はちょっと変わっている。
チック・コリアのオリジナル、それに多くのカヴァーが持っている原曲のスパニッシュ感を、あえておさえている。

やっぱり、ある音楽雑誌では、これが物足りない、と評しているが僕はそうは思わない。

チック・コリアのスペインのようにラテンタッチのリズムを刻まないで、むしろ多少、前のめりにつんのめるようなかたちで、ピアノ、ドラムス、ベースが突き進んでいく。

こんな解釈の『スペイン』は、はじめて聴いた。
このつんのめりリズムは、かえってリズムをキープするのに、原曲より難しいのではないかと思うが、こんなところにも、新人とは思えない、いや新人だからこそのアイディアがあり、それを見事なテクニックで具体的な形にしている。


6曲目は、なんとオースティン・ペラルタのオリジナル曲

『N.Q.E(Naguib Qomah Effendi』

ロン・カーターのベース・パターンから始まるこの曲、

ピアノとドラムスの乗っかり具合が、ハンコックを思わせるというか、

間口と音楽性の幅が広いハービー・ハンコックを思わせるということは、
やっぱり、ビパップ、ハードバップのジャズだけではなく、ジャズ・フュージョンの時代をも吸収してきた若い世代のオースティン・ペランタだからこその演奏であると思う。

この曲でも、壮絶なビリー・キルソンのドラム・ソロ。

このソロは、まるで渡辺香津美のMo’Bapのドラムス・ソロかと思われるくらいの激しさ。

素晴しい。


7曲目は、これも映画『白雪姫』の中で使われ、マイルス・デイヴィスもとりあげた曲。

『Someday My Princess Will Come (いつか王子さまが)』

この曲、誰でも知っているので、ぼくは以前、ウクレレのソロ演奏に挑戦したが、曲がすかすか、というか、わかりやすいメロディをどうアレンジして自分のものにするか、実は、演奏者の力量が如実に問われる曲だった。

当然のごとく、ジャズは好きでも自分でちゃんと学んだことのない僕はあえなく撃沈。それ以来、この曲をうまく料理しているアーティストは、みん神業師のように見える。

オースティン・ペラルタが、ゆっくりしたメロディーから入り、途中でやはり、ビリー・キルソンの激しいドラム・ソロがあり、またゆっくりとしたメロディに戻ってくる。

ジャズとは、こんあものたとついうっとりしてしまう。


8曲目の『Balaqeeti(バラキーティ)』 は、

オースティン・ペラルタのオリジナル曲。ジャズ・スタンダードの名曲の中にはさまっても、何の遜色もないオリジナル曲。最初にも書いたが、このCDを録音した時には、オースティン・ペランタはまだ14歳だったのだ。
オースティン・ペランタのこまかく可憐な鍵盤さばきが引き立つ。


最後の曲は、ジョン・コルトレーン のバラードの名曲

『Naima(ナイマ)』

静かな演奏ではじまる。

今までの、オースティン・ペラルタのピアノとビリー・キルソンのドラムスのバトルのような曲から、少しスローダウンして、ゆっくりと、ロン・カーターのウッド・ベースのたおやかなリズムにのりながら、味わうような曲。

演奏している本人達が、きっとそんな気持ちで自分達の演奏を味わっているに違いない。

オースティン・ペランタはリリカルな響き。

一種、オースティン・ペラルタのピアノは、最近活発な展開をみせるヨーロッパのジャズのピアノのような透明感がある。

ドラムとのバトルをしていたピアノではなく、流れるような音のつながり。


このCDは、ぼくは、あえて、ジャズをあんまり聴いたことのないひとにオススメしたい。

ジャズの本流をずっと聴きこんできた人は、おそらく、なにやかにや言いたいことがあると思う。実際、音楽雑誌の評論家は、一定の評価はしながらも、この部分が物足りない、あそこが、まだなってない、と注文をつけている。


しかし、彼らが注文をつけたその部分にこそ、彼の新しさがあり、オリジナリティがあるのだ。

録音時に14歳だったという早熟の天才は、ジャズのメインストリームだけではなく、今のジャズ。今、NYや北欧や、世界中、いろんなところで新しい局面に入ろうとしているジャズの息吹をたっぷりと呼吸しながら、みずからが、その担い手の代表になるべく登場して来たに違いない。

だから、ジャズとは、なんていう余計な与件を持たないもの、知らない人のほうが、純粋に楽しめるのではないかと思う。

ジャズを聴きたいんだけど、何から聴いたらいいですか?というひと。

ジャズは、教科書に書かれた歴史ではない。

もちろんジャズが発展してくるためには、多くの偉大なアーティストの功績や、ジャズの大きな流れがあった。

でも、ほんとうにジャズを聴きたいなら、今、現在、進行形のジャズを聴くべきだと思う。

オースティン・ペラルタの『処女航海』は、なにも、きをてらった作品ではない。とびはねた部分もあるが、有名なジャズのスタンダードやハービー・ハンコックやチック・コリアの名曲も取り上げた、正攻法のジャズだ。

でも、とても新しさ、新鮮さ、未来への嬉しい予感を感じさせてくれる作品だ。

なんの偏見も与件も知識ももたずに、純粋に楽しんで欲しいと思う。


追記
ビリー・キルソンの激しいドラムス、ロックやフュージョン、AOR系のドラムスをこよなく愛するあのかたにはぜひ聴いてもらいたい。
そんな意見や印象をもつのだろうか。
とても興味がある。







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最終更新日  2006年04月14日 16時31分55秒
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