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奇妙な惑星   ~Peculiar Planet~

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June 5, 2011
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テキサスからニューヨークへ帰る日の朝。



飛行機の時間は、朝9時10分。

時間はたっぷりある。

ということで

ホテルを6時前にチェックアウトして

ダウンタウンまで、南部地方特有の朝ご飯を食べに行ってきた。



ダウンタウンのはずれにあるその店は

パリス・コーヒーショップという名前だった。

テキサス州のパリス市にあるわけでもなく

フランスのパリとは、まったく関係なさそうなので

どうして、そんな名前になっているのかはわからない。



P6166471
2011 Tabitha All rights reserved.



朝6時半前だったけれど

もうすでに、人がかなり入っていた。

雑誌にも載っている店なので

観光客も訪れるはずだけれど

そんな朝早くにきているのは、

どうやら、地元民しかいないようだった。



レジの女性に、1人であることを告げて

カウンター席に座ると

ウェイトレスがすぐにやってくる。

「おはよう、スィーティー。コーヒーでいいわね?」

コーヒーを頼んで、メニューとにらめっこをしている間

後ろの席の、トラックの運転手らしき人が

他のウェイトレスと一緒に

強いテキサスなまりで

数日前に優勝したダラスの話をしているのが聞こえてくる。



P6166472
2011 Tabitha All rights reserved.



南部の朝ご飯で有名なのは

トウモロコシのおかゆであるグリッツと

グレィヴィーソースのかかった、ビスケットだ。



悩んだ末、ビスケットと、卵とソーセージを頼んだ。



そうこうしているうちに

客が入ってきて

カウンター席が埋まり始めた。



カウンター席に座る客は

ウェイトレスに、おはようと言うだけで

何も頼まない。



皆、常連で

注文などしなくても、

食べるものが決まっているのだ。

もしかしたら

常連さんの決まり席を陣取ってしまったかと

びくびくしながらコーヒーを飲んでいたら

隣に座った男性が、話しかけてきた。



「みかけない顔だね。」



ここは、南部の町だ。

ニューヨークと違い

いろいろな人種がいる訳ではない。

朝早く、地元の人間ばかり集っている店の中で

私の存在は、ものすごく異様に見えるはずだ。

私は、緊張しきって

声を裏返しにしながら

飛行機の時間の前に

南部のおいしい朝ご飯で腹ごしらえをしようと思ったことを

説明した。



「じゃあ、この店に来たのは大正解だね。

 ここの朝食は、町で一番おいしいよ。」



60歳とっくにすぎているだろう、その男性はいう。

「どこからきたの?」

「ニューヨークです。」

「ニューヨーク市内?」

「そう。」



ここまで、話すと

ビスケットが出てきた。


ビスケットとグレイヴィーの図

P6166476
2011 Tabitha All rights reserved.



南部では、ニューヨークから来たと言うと

いつも歓迎されるわけではない



反対隣の男性は

「ふん。ニューヨークか。」

とつぶやき、そっぽを向いた。



気まずい沈黙が流れる。



私は、ビスケットをちぎって

どっぷりとグレイヴィーにつけた。



「ニューヨークか… 昔行ったよ。」



最初の男性が、口を開いた。

「市内じゃなくて…、北の方。」

「1969年だった…。」

「暑かったよ…。」

「みんな、燃えたよ…。」

「みんな、あそこにいた…。」

強い、テキサスなまりで

男性は、独り言のように

ぽつん、ぽつんと、話し始めた。



男性が、そこまで言ったときにぴんときて

聞いてみた。

The Whoを見た?」

男性は、驚いたように私を見る。

「ねぇ、もしかして、ウッドストックに行ったの?」

私の質問に、男性は答えない。

「そんな昔の話を、知っているのか?」

「知らないわけないわ。すばらしい伝説よ!

 あの、ウッドストックに行ったなんて、すごいわ!!!」

無表情だった男性の顔に笑みが広がった。



男性の笑みで、私の緊張もやっと崩れ去る。

グレイヴィーをたっぷりつけた軽いビスケットが

口の中で溶けて行く。

最高にうまかった。


ソーセージと目玉焼きの図
P6166477
2011 Tabitha All rights reserved.



男性は、その後もぽつん、ぽつんと

ウッドストックのことを話していたと思うけれど

とても強いテキサスなまりのせいで

内容はあまり、わからなかった。



私は、朝ご飯を食べ終わると

ウェイトレスに、とてもおいしかったことを告げ

それから、男性に別れを告げた。

「また、戻ってくるんだよ。ここの朝ご飯は一番だからね。」

男性は、そう言った。



そう言いながら男性は、パンケーキに

シロップをじょぼじょぼとかけ

シロップにどっぷりつかったパンケーキを

フォークでつぶしまくって、よく混ぜ

どろどろの物体を、うまそうに口に入れていたが

それは、南部の食べ方なのか

その男性の特別の食べ方なのか

私には、わからなかった。









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Last updated  June 23, 2011 11:40:55 AM
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