|
テーマ:猫のいる生活(136636)
カテゴリ:カテゴリ未分類
この映画はなんと云う物語なんでしょうねぇ。
「タンゴレッスン」。1996年の作品です。 クレジットには「タンゴの魅力にとりつかれた女性映画監督と著名なタンゴ・ダンサーの愛の物語」とありますが、愛と云うにはあまりに消極的。 と、云うか、これを愛と云うのでしょうか? まさに「大人の恋愛映画」と云うにふさわしい作品です。 監督はジョニー・デップの主演した「耳に残るは君の歌声」のサリー・ポッターと云う女流監督です。 「タンゴレッスン」は自身の体験を映画化したもので、彼女自身が主演して自分自身を演じています。 この映画は彼女が演じた最初の映画となりました。 この出演に関して彼女は「私が踊りたい欲求が映画の勢いから出てきたため、私は演じなければいけないと悟った」と語っています。 イギリス人の映画監督サリー(サリー・ポッター)はパリで新作の脚本に向かっています。 家具のない部屋に白いテーブル。 サリーは几帳面に鉛筆を削ります。 整然とした室内にはチリひとつ落ちていない。 そんなシーンがモノクロで描かれていくのです。 そう、この映画は基本的にモノクロなんです。 色彩がつくのは、サリーが思い描く映画のシーンだけです。 なのにカラーのシーンよりも、モノクロのシーンの方が確実に「色」がみえる。 なんとも不思議なんですが、映画をご覧になったら分かります。 気分転換に街にでたサリーはタンゴの調べに誘われ劇場に入ります。 ステージのダンサー、パブロ(パブロ・ヴェロン)のダンスに吸い込まれ、その足で楽屋に押しかけて、パブロに「タンゴを教えて」と頼みます。 こうして、まったくダンスのダの字も知らない初老の女性による、おしかけレッスンが始まるのです。 そしてサリーとパブロはいつしか魅かれあう仲になるけど... ここで誤解ないように云わせていただくと、サリー・ポッターは映画監督と同時に脚本家でもあり、「作曲家」で「ダンサー」なんです。 映画のラストシーンで彼女は「I am You」と云う曲を歌いますが、この曲は彼女自身の作品です。 そして、みごとなダンスのシーンの数々。 映画の後半で、仲間たち4人で踊るタンゴの華麗なこと! タンゴを2人以上で踊るのを見たのはこれが初めてです。 とにかくタンゴを踊るシーンはどれも艶かしく情熱的で、美しいのです。 しかしサリーとパブロの恋愛は、もどかしくなるほど遅々としてすすみません。 と云うか、ふたりが出会ったときと、ラストとでどれぐらいの進展があったのか? この映画はそんなことど~でもよくなる映画なんですね。 「なぜ、タンゴを選んだの?」「タンゴが僕を選んだのさ」 タンゴに選ばれた男の孤独。映画に選ばれた女の孤独。 2人は互いに、得ては失い、喜んでは傷つくのです。 粉雪舞うセーヌ川のほとりでタンゴを踊るシーンは鳥肌モノの美しさです。 この監督は私の好きな個性を確実に持ってますね。 まさに映像美のオン・パレードです。 例えば鏡に写ったパブロの横顔。 その鏡には遠くサリーがぼやけて写し出されている。 そのサジ加減の絶妙さたるや! なんとも観ていて、ハッとさせられるシーンの連続です。 ロマンティックな展開がさっぱり見当たらない映画。 ドキュメンタリー風のタンゴのレッスンと、2人のアーティストの自我の張り合い。 ケンカと仲直りの繰り返しの映画です。 だから若い人には理解できないかも知れません。 「精一杯生きろ。そして苦しめばタンゴが理解できる」 タンゴとはそう云うものだったのですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|