辛口クルマ考 その3:ウィンカーの位置
最近のクルマは、デザインが突き抜けてきました。きっと、デジタルなツールを使った設計ができるようになって、さらに鉄板プレス技術も、鉄板そのものの品質も進化して、うねるような曲面デザインが自由にできるようになったのでしょう。すこし昔に、モーターショウのコンセプトカーで見たような「未来なクルマ」や、手塚治虫が漫画に描いていたような、近未来の流線型のクルマ。そんなデザインがとりいれられた市販車が、実際見られるようになりました。しかし、そんな見た目デザインを追い求めるのは、どうでしょうか。ヒトがクルマを使う目的は、移動です。つまりクルマは、工業製品です。鑑賞する芸術作品ではありません。その場合のデザインとは、工業的機能をパッケージすることです。見てハッとする表面的な美的デザインは、機能のパッケージをきちんとしたうえでの、「お遊び」としてあるべきです。決して、パッケージという本分より優先させてはなりません。最近聞くようになった「工業デザイナー」という言葉には、そういうパッケージ屋としての、エンジニアの気概を感じます。自動車デザイン屋なんて、まさに工業デザイナーであるべきです。しかし昨今のクルマを見ると、ずいぶんとパッケージが疎かになっています。例えば。最近よく見かける、車両前面のウィンカー(黄色)ランプの位置。その機能からいって、ヘッドライトやフォグランプ、ポジションランプよりも外側、車両の最外側にあるべきです。なぜなら、右直事故を防止する役割があるからです。それはドライバーなら納得できるはずです。交差点に右折待ち車両Aがあって、その対向にも右折待ち車Bがあったとします。Aが大型車の場合、直進車の自分にとっても、Bにとっても、交差点の見通しが悪いことになります。そういう場合、Bはごく徐行して右折にかかるべきでしょう。こちらも、直進優先とはいえ、交差点には注意して進入すべきでしょう。が、この場合には自分優先という意識で、直進車は油断しがちです。右折のBも、Aで見えない対向先は、予想でエイヤ!と右折にかかりがちです。徐行しながらも交差点を右折にかかるBのウィンカーの光が、Aの陰から、対向直進車になるべく早く見えるために、Aの車両最外側にあるべきなのです。そのくらい、常識でわかるでしょう。誰だって。これまでの歴史上のクルマはほとんどすべてが、最外側にウィンカーがついていた。そうあるべき、だったからです。自動車製造側はその意味ある歴史を守るべきだし、道路運送車両法がきちんと規制すべき、重要な安全要件だと思います。それが、最近のクルマでは、どうですか。ウィンカーランプがヘッドランプより内側に入っている車の、なんと多いことか。特にひどいのが、日産。ほとんどが、そういうクルマ。そうでないクルマが圧倒的に少ない。ボクは、そんな日産の危険なクルマ作りが、大嫌いです。しかもそういう悪しきデザイン手法を、日産のデザインアイデンティティにしようとしている風がある。ナカムラシロウちゃんよ、そこんとこ、どうなってんのよ!?それでも工業デザイナーの端くれつもりなの?ウィンカーランプの黄色い光が早く認識されることが、右直事故を避ける手段。夜なんて、ホント危ないですよ。最近はヘッドライトが明るくなっているのと、ウィンカー位置がヘッドライト位置と近くなっているので、色が混ざりやすく、ウィンカーランプの点滅がヘッドライトの明るさに負けて、本当に認識しづらくなる。明るい場所でヘッドライトカバー類のデザインがどう見えるかを優先して、夜の危険と引き換えにするような、危険なデザインパッケージをしているなんてのは、工業デザイナーの自覚が足りません。工業デザイナーならば、まず機能を優先して、必要なら次に見栄えを両立させる。そういう設計屋としての意地をもって、きちんとパッケージすべきです。かのベンツでさえ、それができていない。今のEクラスのウィンカーは、ダメです。色の混ざりがひどい。バイクに夜乗っていると、ひやりとすることが多い。バイクの一灯ライトは、対向車から速度や距離感が認識されにくいので、目の前で対向車に右折にかかられることも多い。だから、右折意志をもった対向車の早期発見が、運転意識上、必須。そんなときに、右折待ちの車のウィンカーの黄色点滅が、ヘッドライトと色が混ざってしまい、見えないのは、本当に危険ですよ。右折待ちトラックの陰から出てくる、右折開始から遅れて見えやがる対向右折車の「最外側についていないウィンカー」には、モノを投げつけたくなるほど、頭にきます。(よく経験するのが日産キューブの危ない右折!なんどでも言う、日産大嫌いです)これら、規制速度を守っていても、危険なのです。自動車製造屋は猛反省してすぐに改善に取り組んで欲しいし、政府だって規制強化してほしい。ヘッドランプ・レベライザーの装着義務なんてのをする前に、このウィンカー問題、なんとかしようと思わないですか?役人の想像力の欠如は、今に始まったことじゃないけど。