サッカークリニッキ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　SOCCER CLINIKKI

「君、そんなとこから曲がるわけねぇだろ。」
「へ？」
（座って開脚し、前に体を倒させると、おへその辺り、背骨の途中から曲げようとする。そんなところで体は曲がらない。）
「下腹に力入れて、下腹を床に押し付けるように曲げるんや。背中は前に曲げるんじゃなくて後ろに反る。」
「こー？」
「そんな感じだけど、ちょっと違う。
　人間の体は、背骨の途中で折れ曲がらないのだよ。
　脚の付け根辺りを支点に曲がる。広げた足もモモが内側にひねられてたら曲がりにくい。
　投げ出した足の先は外に向く。モモを外旋させなきゃだめだぞ。」
「こー？」
「そうそう、そんな感じ。
　頭を下に押し付けるんじゃなくて、下腹を床に押し付ける。
　出した両手を前に押して行くつもりで。」
「こー？」
「肩は胸鎖関節から動くぞ。息を吐きながらー。」
「ふぉー。」
「HGか？」
「フォオー。」
「もうええっちゅうに。
　前に倒すときは猫背にならないように、下を向くより、顔は前を見る方がいいな。
　胸を張りながら。そうすると骨盤は前傾しやすくなるんだよ。
　背骨の下の方、骨盤の上の辺りが反って下腹を押しやすくもなるだろ？」
「ふん。」
「おらおら、足首が外旋してないぞ。」
「いっぺんには無理だよ。」
「ノー、ノー。足首、モモ、股関節が外旋すること、胸を張って下腹を床に押し付けるように押し出していくこと、肩も、全部リンクしてるの。」
「リンクって？」
「全部、連動してるっちゅうこと。全部の動きが一緒になって協力し合いながら前に押し出していくと、体が楽にしっかり倒れる。ま、確かにいっぺんにじゃなくて今日は、脚の付け根から曲げることと背中を伸ばすことを考えてやれ。」
「へーい。」
「ほら見ろ、さっきと全然違うだろ。」
「ふん。」
「立って前屈してみな。」
「へーい。」
「ほら、両手が前に着くどころか、胸が脚にくっつくぞ。」
「うしろが見えるよ。」
「折れ曲がった頂点が、さっきまでは背骨だったのが、今は、おケツが頂点。脚の付け根で曲がってる。」
「ほーんとだ。全然ちがうね。」（クリ母）
「股関節の柔軟性はスポーツ選手には特に大切。内旋と外旋も基本の基本じゃ。」
「バレエもそうだよ。」（クリ姉）
「そーだな。おねーチャンは、小ちゃい時からバレエやってるから、ペッタンコになるぐらい曲がるぞ。」
「バレエ習った方がいいの？」
「やめてくれ、おまえのタイツ姿は、想像するだけで面白すぎる。」
「やかまし。」

「クリ、股関節がどこにあるか指さしてみな。」
「ここ。」（脚の付け根を指す。）
「違う。おしりの後ろ側の両サイドにあるくぼみのところ、そこを指で押さえて足を内外旋させてみ。」
「グリグリ動いてるよ。」
「そこが股関節。股関節とか肩関節は、色んな向きに動く。運動するには一番大切な関節だ。柔らかく、大きく可動させられるようになんなきゃスポーツ選手にはなれん。」
「へーい。」
「走るのも蹴るのも二軸で動くのもまず、ここのストレッチとエクササイズなしではうまくいかん。」
「ふん。」
「ちょっと前まで、すごい柔らいと思っていたのに、考えてみたら、あれは3年生ぐらいまでだったよな。今日から毎日やれ。ストレッチ５種類、毎日。」
「はーい。」
「柔軟になると動作＝体の動かし方が合理的にできる。」
「合理的？」
「無駄なく楽に動くし、強く速くなれるってこと。
どんなスポーツ選手の体操見ても体は柔らかいだろ。ケガも少なくなる。」
「ふーん。」

毎日やるストレッチ
１． 片足で立ち、浮いた脚を伸ばしたまま、股関節を外旋、内旋。
２． 座って体育すわり（脚の間は肩幅ぐらい開く。）手は後ろについて支える。ヒザを左右に倒す。倒す側のモモが外旋、逆側のモモは内旋。足先まで同じように内外旋。
３． 座って開脚・ヒザを少し曲げ、外くるぶしが床に着くように股関節外旋。モモの内側の筋肉が伸びるのを感じる。
４． 座って開脚・前屈。背骨を反らせ、下腹を床に押し付けるように前に押す。前に物（枕など）を置いて両手で押しても良い。
５． 座って開脚・左右の股関節の真上（おしりの上）に交互に軸を寄せながら、体幹を平行移動させる。
股関節エクササイズ
１． 四股スクワット。
２． 四股から左右に体重移動。
３． 相撲の四股踏み。

「クリ、二軸動作のランもサッカーの動きも股関節、肩甲骨の柔軟性がなければ出来ない。
それが柔らかければ、自然にいい動きになっていくぞ。」
「へー。」
「5年生になったんだから、今までやってきた色々な動きをいい姿勢でやれるようにトレーニングしよう。スマートに、背筋を伸ばしてしっかり動く。しっかり手を振ったり、しっかり体重を乗せたり、鋭くターンしたり・・・。」
「ふん。」
「そのための股関節ストレッチや。」
「へーい。」
「テレビ見ながらでも出来るぜ。毎日続けることが大事。サボりたきゃ、サボってもいいけど自分のためにやるんだっちゅうことを忘れるな。」
「何回づつやるの？」
「自分で決めな。自分で決めたら、必ずやり通せ。」
「えー。何回やったらいいと思う？」
「自分で決めろ。」
「3回。」
「あほ。テレビ見ながらずーっとやっててもいいんやで。」
「そっか。これやってればずーっとテレビ見れるね。」
「その通りやな。」
「また、よけいな知恵を授かってないで、宿題やんなさい！」（クリ母）