サッカークリニッキ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　SOCCER CLINIKKI

「おとーさん、いつもより、マーカーとマーカーの間が、長いじゃん。」
「おう、そーや。」
「なんで？今までより簡単になるじゃん。」
「あまーい。今までは、足元に慣れるために狭い距離で切り返すのをやってたけど、
おまえは、スピードが課題やろ？速い動きの中でコントロールできるかどうか。
今日は、スピードアップ、ルックアップ、ワンランクアップが目標だ。」
「はい。」
「DFとの距離を考えながらやれよ。フェイントをダブルでやることもできる。
今までみたいに下ばっかり見てちゃだめだぞ。
これからは、抜くためだ。速い流れを途切れさせず、敵を見る、
ランクアップした実戦ドリブル。」
「ふぇー。」
「何や、ふぇーって。よかったなあ。またうまくなれる。」
「・・・。」
「この前の試合、DFに近づきすぎて、自分から相手に当ててしまって引っかけられたのは、
仕掛けが、相手に近すぎてたからだ。相手との距離を考えろ。」
「ふん。」
「マーカーは、動かないけど、実戦じゃあ、相手は猛スピードで寄って来る。
マーカードリル、こなしたら、俺が相手だからな。敵を想定しながら、スラロームしろ。」
「ふぁーい。」

「ボールを持ってDFにゆっくり近づいて行くときは、割と抜きやすい。
DFは無闇に飛び込めないから、後ろ向きで後ずさりする。
その時、スピード変化が効く。どれだけ瞬時にトップスピードに入れるかが勝負だ。
相手の体重の乗り方を見て、一気にボールをプッシュして走れ。」
「ふん。」
「フィーゴみたいに、フンフンフンって鼻歌唄っているような動きから、急にパッと出る。」
「フンフンは得意なんだけどね。」
「この前の北朝鮮戦の安田の仕掛けも1対1になってから、ゆっくりに見えて、
急にステップオーバーで思いっきり出して、スピードアップしたのがGOODだった。」
「フンフン。」
「右の内田も、加地も、韓国の左サイドも、突破力のある選手は、
急発進するような加速を武器に抜いて行く。」
「フンフン。」
「・・・。ごめん。フンフンはもう忘れてください。」

コーンを並べてのアウト、インやエラシコなど足技を磨くためのドリブルスラロームのドリルは、
下を向いて自己満足するだけのドリブルになりやすい。
横方向にかわして行きがちで、タテに突破できない。
スピードにも乏しいため、攻撃が遅い。怖さがない。
ボールコントロールスキルのためには、もちろん必要な練習だが、
スピードや、急加速のともなった縦突破も必要だ。

距離をおいて並べたマーカーの間をトップスピードに近い速度でドリブルしながら、
跳ねたり、思わぬ方向へ行くボールを素早い足の動きとボディバランスでコントロールしつつ、
敵を2人、3人とかわす練習。
ゴールに向かってタテに仕掛けて行く相手にとって怖いドリブルのために。

「オレと1対1になったら、安田ステップオーバーやキックフェイントとかシンプルな技で抜いて、
即、的に向かって、シュート。」
「ゴール、小さくない？」
「打つ前に、ちゃんと確認して狙わないと入らないぞ。」
「もう少し、広いほうがいいよ。」
「しゃらっぷ。
オレが寄って来るのを待って抜くんじゃなくて、コーンを抜けたら、急加速でスピード勝負。
シュートまで、時間をかけるな。雑なシュートもいかん。必ず、しっかりボールを捉えろ。」
「ふぁーい。」

「そんな、体が逃げていくようなシュートで入るわけがない。」
「ふん。」
「目印より、上にフカしたら、腕立て5回ばい。
日本代表になりたいのか？ミドルもショートもしっかり枠に行かせろ。
蹴ったあと、止まってるぞ。そんなシュートが入るわけない。体ごとゴールに向かえ。」
「やってるよ。」
「まだまだ。縦突破のあと、何歩も走ってたら、敵もGKも寄って来る。
出したボールに置いて行かれるな。前傾して追え。」
「ひー。」
「北朝鮮に勝つためには、チョン・テセのようなスピード突破で、
強引でも気持ちの乗ったシュートを打たなきゃいかん。」
「敵じゃん。」
「敵でも素晴らしいもんは、すばらしい。」
「ふーん。」
「シュートの弾道イメージは、憲剛、山瀬のミドルやで。」
「おとーさん、これ、ドリブル練習じゃなかったの？」
「何言ってんだ。ドリブルだろうが何だろうが、みんな、シュートを打つためにある。
ドリブルしたら、パスやシュートにつなげるのは当然だろ。敵が警戒するぐらい、いつでも狙え。」
「そっか。」

「どーぉ？」
「OK。今のシュート、良かった。
前に跳ね跳ぶような感じで行けば、上には上がらない。体重の残すと上に行く。
踏み込む足をボール横に合わせよう合わせようってするよりも、
スピードを落とさず、蹴り足をボールに合わせて行け。
少々、遠かろうが、近かろうが、浮いてようが、構わん。ボールの前に立ち足が来たって、蹴れる。
ボールが、どこにあろうが、要は、蹴り足でしっかり捉えられるかだ。
試合で踏み込み足のタイミング計って遅くなったら、敵が寄って来るんやで。一瞬もためらうな。」

「ほぉりゃー。」
「おお。今のなら、東アジアで勝てる。」
「審判よければ勝てるよ。」
「審判のせいにしてる奴は負ける。日本代表は、フェアに勇敢に闘ったぞ。
ちゃんと抗議もしたけど、完全アウェイの笛を吹かれても勝てる強さを持たなきゃいかん。」
「腕立てしよ。」
「腕力じゃなくて精神力と速いリズムや。あと、10本。負けるな。」