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カテゴリ:がちがちハードボイルド
フツーの主婦がスナイパー?という荻原浩の作品を読んだ。
○ストーリー 中学1年の長女と幼稚園の長男,そしてお人好しで少し頼りない夫を持つ40代の主婦曜子には,誰にも言えない過去があった。それは25年前,アメリカで暮らしていた時,彼女と祖父が暗殺者だったこと。だがある日,過去からの追っ手は彼女の前に姿を現した。 ----------- 荻原浩の作品を読むのは初めてだ。ちょっと変わった設定が,僕の好みと会うんじゃないかと思っていて,図書館でいくつか手にとってみていた。ちょっとポップそうな内容のこの作品を選んで読んでみた。 設定は少しマンガみたいだ。主人公の曜子は41才の主婦。どこにでもいるフツーの主婦だが,実はアメリカで育った少女時代に暗殺者だった。25年ぶりに家を守るために,仕事をする。 曜子の一家は,中1の娘は私立中に通い始めて,クラスでシカトにあっている。幼稚園の息子はやんちゃざかり。夫は勝手に転職し,友人と企業したが軌道に乗らない。 と,設定だけ紹介すれば,ひょっとしたら『奥様は魔女』的に,ひじょうにポップに思えるのだが・・・実際はなんだかとても深刻な内容で驚いた。 ----------- 曜子のアメリカ人の祖父は,第二次世界大戦と朝鮮戦争で狙撃手だった。そしてオクラホマに戻って農場を経営しつつ,狙撃の技術を利用して暗殺の仕事もしていた。曜子は祖父6歳から10年間祖父と暮らし,その技術を学び,最後には同じ仕事もこなす。 この作品で特徴的なのは,彼らの仕事は『必殺仕事人』的な正義の執行者ではなく,指定された相手が誰であろうと片付ける暗殺者であることだ。 だからこそ,曜子はずっと罪悪感を抱き続ける。その表現はかなりインパクトがあって恐ろしい。 リアルだなと思いつつも,設定自体が変化球なのに,ここだけまともなのに少し違和感を感じてしまった。 ----------- 同じように,曜子の一家の現実的な問題が,曜子が仕事を引き受ける理由になっているのにも,驚いてしまった。確かに依頼者からの脅迫もあったけど,結局は自分の家の小さな幸せ,しかも私立校に通うとか,スイミング教室に通うとか,そういうレベルのことを守るために,他人の命を奪うって,どうかと思う。 いろいろ悩んでいるようなのに,一方で娘に対するイジメの張本人には,狙撃銃を向けて脅す。このクラスメートも悪いけど,精神を壊してしまうほど脅迫をするのは,ひじょうに暴力的な解決だ。 ----------- フィクションを楽しむのか,リアルな心情を描くのか,どちらに主眼を置きたいのかよく分からない作品だった。和製の女性主人公のハードボイルドを期待した僕としては,不満が残るばかりだった。 これが荻原作品の中で,どういう位置付けなのか知りたいところだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.03.20 20:38:31
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