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2011.09.08
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『探偵はBARにいる』として映画化される東直己の〈ススキノ探偵シリーズ〉の特別編を読んだ。

○ストーリー
〈便利屋のデブ〉あるいは〈ススキノ探偵〉が大学生だった頃,札幌の夏は暑かった。〈俺〉は,まだ人の殴り方も知らず,ヤクザとの距離のとり方も知らず,女の扱いも知らない。だが少しずつ,自分が間違っていると思うことへの対処方法を学ぼうとしている。〈俺〉が〈俺〉になった夏の物語だ。

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〈ススキノ探偵シリーズ〉の〈俺〉は,ススキノの飲み屋の常連で用心棒,主に夜の街の人々のトラブル解決を生業とする〈便利屋〉として登場した。時代がかったダブルのスーツを着ているので,下手をするとコスプレかとも思われてしまうし,ミスも多いのだが,やはり心の深いところではハードボイルドだった。

そんな〈俺〉も,最初から出来上がっていたワケではない。作品ごとのつながりはそれほど強く無いが,これまでは時系列的に発表されてきたシリーズだが,突然第1作のさらに前の頃のエピソードを作品にしてきた。

当たり前だが,映画化を機会に,読みやすく,若々しい作品を,というオーダーがあったんだろうなあ。

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この作品は,最近のシリーズとは雰囲気が違う。ただし,それは最初から狙っている内容で,肯定的にとらえたい。

この作品でも相棒として,〈俺〉の面倒を良く見てやっている,高田は,相変わらず頼りになる。

チンピラとして登場した○○は,〈俺〉と対立しつつも,手際の良さで〈俺〉を感心させ,最後は互いを認め合って別れる。

だが何よりも楽しめるのは,まだ若い〈俺〉を覗けることだろう。殴り方を知らない,ヤクザを怖がってしまう,金儲けの方法を知らない,トラブルの解決方法を知らない・・・まだまだ”半端者”の〈俺〉がそこにいる。

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ストーリーは残念ながら散漫だと感じた。

アパートに住む老人の地上げの問題,悪質な約束手形に対する報復の物語,フィリピーナ・ダンサーの謎の失踪,と小さなトラブルが続き,さてこれをつなぐストーリーはナニ?と思って期待をしたが,何も無いらしい。

オチは無い。単純に,淡い青春が語られている。

そう言うのもキライじゃないけど,ちょっと物足りない。

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若い頃の〈俺〉は,いろんな部分で「ススキノ、ハーフボイルド」の主人公・省吾をほうふつとさせる。ただ,自分を確立しようと精一杯あがいていた省吾と比べると,中途半端な〈俺〉に対しては,飲み屋や,賭場や,ヤクザなど,周りの人々が本当に優しく扱っているように感じてしまった。

これもまた時代ゆえの”ゆるさ”なのだろうか?

〈俺〉って恵まれた人だったんだ。

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〈ススキノ探偵〉のファンは,外せない作品だろうし,『探偵はBARにいる』で興味を持った人にもライトな語り口で向いていると思う。

いろんな意味で,タイミングよく企画された作品だと思うな。

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ところで,このシリーズって,最初は早川のハードカバーで出版されるのが通例だったけど,この作品は最初から文庫版で出てしまった。ハードカバーでそろえているファンは,・・・腹を立てているだろうなあ。







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Last updated  2011.09.08 22:33:10
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