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カテゴリ:がちがちハードボイルド
ねじめ正一のミステリー作品「こちら駅前探偵局」の続編を読んだ。
○ストーリー 佐倉探偵事務所は,西町の駅前商店街に事務所を構えている。商店街のお茶屋の大旦那で西町の上原謙と呼ばれていた老人が病死した。佐倉の元に3人の女性が現れ,故人が一番愛していたのは誰だったのか調べてもらいたいと泣きつく。だがその依頼の裏に隠されていた事情とは? ------------ 直木賞作家・ねじめ正一のミステリーだ。ねじめ正一らしく,人情味にあふれた作品となっている。長編だった「こちら駅前」の,数ヵ月後で始まるこの作品は,短編集だ。 主人公・佐倉峡平は,奈々子という小学生を引き取って暮らしている。奈々子は,事故で死んだ峡平の恋人・ハルコの娘だ。佐倉探偵事務所には,半ば押し掛ける形で,大学を卒業したばかりの夏実という見習いも勤めている。そんな3人を温かく見守るのが,西町の不動産屋で,峡平たちの大家でもある大塚の爺さんだ。 前作の長編では,大塚の爺さんの持っているアパートが,事件の舞台だったが,今回は商店街を中心に,西町のあちらこちらが舞台となる。そういう意味では,むしろ今回の続編の方が「駅前探偵局」のタイトルにふさわしい気もする。 ------------ 峡平と夏実は好き合っているのに,死んだハルコや奈々子を気にして,お互い告白することが出来ない,というマンガのような善人たちが主人公なのだが,展開される事件は意外とドラマチックで,なんと4つの短編のうち,3つで殺人が起きる! のんびりした商店街を舞台にしていて,登場人物たちも昭和の空気をまとっているのだから,そこで殺人は無いだろう?と思ってしまう。殴られて軽い記憶喪失とかで十分だ。 わずか1年くらいの間に,3件も殺人事件が起きる商店街って・・・ ------------ 各編について簡単に感想を述べる。 「アーケード殺人事件」:商店街の老朽化したアーケードを建替える議論の後,商店会の会長が撲殺された。そして建替えの資金になる予定だった積立の3,000万円が消えていた。・・・夏実が佐倉探偵事務所に加わり,商店街の面々が登場し,急ににぎやかになる印象。 「迷い猫殺人事件」:峡平の前に12年間会っていなかった学生時代の親友・藤原が現れる。再会を喜ぶ峡平が翌日知ったのは,藤原が翌朝近所の公園で死体で発見されたことだった。・・・主人公・峡平の意外な過去が明らかになる。まったくそんな印象無かったんだけど。ちょっと唐突過ぎるし,猫と事件の関係も強引。 「ニセ恋人事件」:西町商店街の上原謙ことお茶屋の大旦那が病死した。突然現れた3人の恋人は,揃いも揃って商店街で働く様々な年令の女性だった。「本当に愛していた人」を調査する羽目になった峡平と夏実だが?・・・個人的には,これくらいの事件が,ライトな作風とマッチしている気がする。事件は血なまぐさく無いのに,ちゃんと人間のいろんな側面を描いているし,佳作だと思うな。 「ストリーキング殺人」:西町商店街では窃盗が続いており,ついには強盗殺人まで起きてしまった。そんな中,事件の未亡人に対してヘンな噂が流れ始める。しかもそこは奈々子のクラスメートの少年の家だった。事件を解決し,少年を守るため,佐倉探偵事務所が立ち上がる。・・・読み終えてみると前作に雰囲気が似ている。もっと商店街の人々が短編をまたいで登場すると,世界観が広がると思うのだけど,赤川次郎レベルから進歩が無かった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.10.29 11:36:29
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